その他

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「カガミ」と名乗った向こう側のミラーマン。

ケーキをくれたり、体温が低い俺にマントを貸してくれた良い奴だが、子供扱いされて頭を撫でられたのには驚いたし、流石に止めてもらった。
(名前を教えてもらったが、直ぐ後に似合わない、ということで「ミラ」とも呼んでいいと言われたので、それに準じる事にする)


自己紹介を済ませた後、俺達は色んな話をした。ミラも博識で話上手なため、会話が面白いように続く。
住んでいる世界の事、住人の事など話してみると、名前や性格など案外似通ったところや、全く違う代物であったりもする。特に互いの鏡については部分的に異なるものの、見える真実は同じという事が分かり、時間を忘れて話し込んでしまった。




…何度目かの紅茶のおかわりをした所で、ミラが少し考えてから口を開いた。

「…そうだミロ、地獄のタクシーっているか?」
「ああ、いるぞ。そっちもか?」
「まぁな。お前のところはどんな奴なんだ?」
「そうだな…まず第一に犬っぽい。俺を見つけると尻尾振ってコッチに来るし、構え構え五月蠅いんだ。それにいっつもふにゃふにゃ笑ってて、本当に地獄生まれかってくらい間抜けで…」

話していると普段の阿呆面が目に浮かんで、自然と顔が緩んだ。

ふとミラを見ると、なにやらニヤニヤと意味ありげな笑みを浮かべている。

「…なんだよ?」
「お前、そいつの事好きなんだろ」
「なっ!?」

ずばりと言い当てられ、瞬時に耳まで熱くなるのを感じた。
その様子を見て、カガミにやはりといった顔をされる。

「そんな顔に出てたのか…」
「ああ。話してる最中、頬ゆっるゆるだったぞ。そりゃ分かるさ」

そう言われると恥ずかしさが増すが、バレてはしょうがない。隠すつもりはなかった、と前置きしてから白状した。


「一応恋人なんだ」
「へぇ、若いじゃねぇか」
「そんなに歳変わらないだろ!」
「…で、お前を落とすとはよっぽどいい女なんだな」
「いや、男だけど?」


「…え?」


暫しの空白。
そうしてミラが沈黙を破り、ゆっくりと口を切った。

「ミロお前、男…だよな?」
「女に見えるか」
「見えねーよ…お前ホモセクシャルなのか」
「いいや。あいつだけの事で、別に男が好きってわけじゃねぇよ」


実際、自分もこの感情に気が付いた時は戸惑ったものだ。しかし隣に来てみればこんなものかと、すんなり納得してしまった。
それは好き合った後でも感じるし、何より相手の思いの深さも近くに居て初めて知った。


そう思いを巡らせると、あいつが今何をしているのか気になってくる。
こちら側に来て大分時間も経った頃だ。早ければもう部屋に帰ってるかもしれない。


(俺が居ないと知ったらどんな顔をするだろうな)


分かりきっている答えを浮かべながら、俺は多分、笑っているんだろう。
 

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