その他

□Teach
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昼下がり、鏡の部屋には二人分の茶菓子のタルトと紅茶が置かれ、ダージリンの良い香りが漂っている。俺と向かい合う形で座っているもう一人の真実の鏡フラーは、目の前にあるティーセットにきょとんと不思議そうな顔をした。

「どうした、食べないのか?」
「いや…魔法を教わるというのはもっと魔法書や道具とともに行うと思っていた」
「それも後々行うが、研究をしているとお前言っただろう?だからまずは概念の話をしようと思ってな」
「ああ、オレは魔力の原理を解明するために魔法研究を行っているが…そう言えば以前話を聞いた奴は魔法自体知らないと言っていた。ミロは魔力をどんなものだと考える?」
「俺は体力とさして変わりないんじゃないかと思っている」
「体力?」

先ほどフラーが聞いた話のように魔法の概念自体ない世界も存在するし、超能力や第六感をこちらでは魔法とは言わないが、それらの知識がない奴らが見ればそれは魔法だ。体力も魔力も何かを成すエネルギーという点に於いては変わりはない。それを動力として、あるいは鍵として自然に影響を与えて行うのが魔法であると、俺自身は考えていた。
実を言えば俺の鏡を操る力は体力と比例するため俺自身の魔力は全く持たず、真実の目も元から備わっていた身体能力だ。薬を作ったりまじないなどの簡単な魔法しか使えないし、それも使用する魔具や材料本来が持つ魔力を利用したものに過ぎない。

「ミロはそう考えるのか…しかしお前この前初めて来た時物を浮かしていただろ。それは魔法じゃないのか?」
「ああ違う。これは種が分かると面白いぞ?」

そう言って、手に乗るほどの黒い巾着袋の中から砂状の物を取り出してフラーに見せた。粒の大きさはまちまちだがさらさらする手触りのそれは、室内の照明に白く輝きながら掌から零れ落ちる。

「ガラスの欠片か?」
「惜しいな。鏡の破片だ」
「鏡…そうか…!」

流石、察しがいい。
物を浮かすといっても単にこの鏡の破片を物体に付着させ、鏡を操作すれば付属する物体も動く。勿論細かな破片一つ一つを動かす技術は非常に困難で、種明かししただけでは扱えないが。

「俺の所じゃこういった感じだ。もしかするとお前の世界とは勝手が違うかもしれんが」
「いや…良い比較対象になる」

そう言ったフラーの目はキラキラと好奇心輝き、酷く純粋で、少し眩しく思えた。


(何笑ってるんだ)
(ふふ、いや…紅茶のおかわりは?)
(では…いただこう)
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