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□嘘の日
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当日、予想通りミラーマンの姿は朝から見えなかった。それどころか自分が詐欺で絶賛儲け中にも口を出さず、昼までにフォンは普段の倍以上稼ぐことが出来たのだ。


子供達が親や大人相手に嘘を吐いて悪戯する(そんな可愛い物ではなかった)のはちらほら見かけていたから、エイプリルフールを知っている者はそれに過敏になっていた。
しかしフォンはそれを逆手に取り、相手を疑心暗鬼に陥らせて騙しを繰り返していた。

自分の真骨頂とも言えるボイスチェンジャーを使う機会がハニワサラリーマンしかなかったのは惜しかったが、今まで騙しきれてなかった分貰えたので良しとする。
 




そうしてフォンは儲けを一旦休め、中間報告のために死体の家へ戻ってきた。

「見ろよー、これ!!昼前だけでこんなに稼げたんだぜ!?」
「お、上々じゃないか。でもあらかた騙してしまって午後からどうするんだい?」
「のぉ〜ぷろぶれぇ〜む」
「…これまた凄いひらがな英語だね…」
「半分はここに貯金するだろ?そんで一部を資金にして外界の株とルーレット小僧のカジノで使うんだよ!今なら億稼げる気がする!」
「うん、いくらなんでも無理」

バッサリと死体は否定したが、まるで聞いていない。最近までの低収益の反動で完全に、金に酔ってしまっている。

「んじゃあ俺は地下のカジノ場行ってくるー!」
「あ、ちょっと待って!聞きたいことが…」
「夜にまた聞くから後でなー、お礼に酒持ってくるからよ!」

振り返りもせずにせかせかとフォンは墓地から出て行ってしまった。
それを呆れたように見つめ、死体は暗闇に向けて呟いた。
 
「あーあ、行っちゃった。アノこと聞きたかったのに…ねぇ?」
「計画は知ってんだろ、ぶち壊しにする気か?」
「別にアレをフォンに尋ねた所でアイツは頓着しないと思うよ」

そう言って死体が顔を向けた先には男が一人、腕組みしていた。
死体から掛けられた言葉を溜め息一つで払い、どこかに電話をかけ始める。数分誰かと話したかと思うと、通話を切りこちらへ顔を向けた。
そこには意地の悪い笑みが浮かべられている。

「フォンがカジノ場に着いたようだから俺はそろそろ行くぞ」
「あぁ、じゃあまたね」

出て来たのと同じように暗闇へ男は消えていった。

 
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