novel
□静かな夜に
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なんで、おねしょなんて…。
嶺二に押し込まれた風呂の中、ボーッとシャワーを浴びながら頭ん中巡るのは、そればかり。
情けねぇけど、泣いた。
子どもみたいに泣いて、やっと落ち着いた頃。
タイミングを見計らったかのように嶺二から声が掛かる。
…うぜぇ。
何もかも、心の中までバレてるみたいでムカつく。
おれが自分から出ていけないってわかっててやったんだろ。
嶺二の前でやらかしたとか、最悪すぎていっそ笑えてくる。
用意されていた少し丈が足りない服を着てリビングに戻ると、いつも通りバカみたいに笑う嶺二と目が合った。
「ランラン、頭からシャワーかぶったの?髪の毛ビショビショじゃんか!」
しょーがないなぁ、なんて言いながらわしゃわしゃタオルで拭いてくる。
…やめろって言わなかったのは、別に泣きそうだったからとかじゃなくて…。
そうだ、めんどくさかったから、それだけだ。
満足したらしい嶺二の手が、軽く頭を撫でて離れていってしまう。
思わずその手を追ってしまったおれの目を、無理やりに逸らした。
「よしっ、寝よっか!」
ぎゅっと握られた嶺二の手は暖かい。
流されるままにベッドに横になって。
当たり前のようにアイツが隣りに来て。
…いつもだったらベッドから出てけって言うとこだけど、今日はしょうがねぇから何も言わないでやる。
だんだん狭くなっていく視界の中、嶺二の体温がいやに近く感じられる。
「おやすみ、ランラン。」
その言葉に返事を返すこともなく、眠りに落ちた。
少しだけ、前言撤回。
ここにいたのが嶺二で、ちょっと、ほんのちょっとだけ…、よかったって思ってやってもいいぜ。