novel

□素直になれば
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「寿さん、寿さん…。」

んん…。

誰かがぼくを呼んでる…?

「んー、何…?」

まだ目は開けられなくて、声だけで答えた。

「あの…。」

この声…トッキー?

珍しいなぁ、トッキーがぼくを起こすなんて。

「トッキー?何かあったの?」

くるりと体の向きを変えて、トッキーの方を見る。

「寿さっ…。」

「ありゃ、泣いてる?怖い夢でもみちゃったかな?よしよし、おいでーっ。」

「やっ…。」

ぼくの布団の中に入れようとすると、思いっきり拒絶された。

嶺ちゃんショォォォック…。

「っ…くっ…。」

あぁ…、トッキー、座り込んで泣き出しちゃった。

さっきのは、嫌だった訳じゃないんだね。

「トッキー。どうしたのかな?お兄さんに教えてくれる?」

そっと頭を撫でながら問いかける。

「あのっ…。」

涙でいっぱいの顔をあげるトッキー。

「うん?」

服の袖で涙を拭いながら先を促す。

「わた、し…、その、布団、を…っ。」

「布団?」

「だ、からっ…。おね、しょ…っ…。ふぇっ…。」

あー、なるほど。

「そっかそっかー。言ってくれてありがとね、トッキー。」

ぼくもベッドからおりて、側に座ると、震えるトッキーを抱きしめた。

わ…、体冷たくなっちゃってる。

きっと、いっぱい頑張ってぼくに伝えてくれたんだね。

「トッキー?着替えられるかな?」

風邪ひいちゃうからね。

「ぐすっ…はい…。」

「よしっ、タオルと着替え持ってくるから待っててね!」
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