novel
□暖かな体温
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ガチャッ、バタン!
私らしくもない大きな音をたてて部屋のドアを開ける。
中に入り、ドアを閉めた途端、へにゃり、全身の力が抜けてしまった。
その場に座り込むか、込まないかのうちに下着の中に熱いものが渦巻き、ズボンまでもを濡らしていく。
あぁ、出てしまった…。
床を濡らしていく液体をぼんやりと見やる。
体は動かないのに、頭は至って冷静で。
この後どうやって片付けをしようか、とか、前を押さえずにここまで我慢した私を寧ろ褒めてやりたい、だとか…。
様々に思いを巡らせながら全てを出し切った。
嫌味なように軽くなった体。
さて、風邪をひく前にシャワーを浴びなければ。
ですが、このまま歩いては部屋を汚してしまいますね。
あぁ、確か、バッグにタオルが…。
それで軽く拭いてからにしましょう。
「トキヤ⁉」
「…っ⁉」
よく知った声に呼ばれた私の名前に、俯いていた顔を勢いよくあげる。
「お、音也っ…⁉なぜ、貴方がここに…っ。」
確か今日は、翔と出掛ける予定では…。
「あー、翔が補習忘れてたみたいでさ、また今度になっちゃったんだ。そんなことより、大丈夫?」
心配そうな顔が駆け寄ってくる。
「あ…、こ、来ないでくださっ…。」
そう言ったときにはもう、暖かい腕に抱きしめられていた。
「よしよし…、全部出せた?」
優しく腰の辺りをさすられると、気づかなかった分がピチャピチャと音をたてて水たまりを広げる。
「ん…、タオル持ってくるからちょっと待ってて?」
自分でやります…、そう言わなくてはいけないのに。
喋り方を忘れてしまったかのように、その言葉は私の口から出てきてくれなかった。