novel

□君の手のひら
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「翔ー!いくよっ!」

「おー!ナイスパス!」

忙しいレッスンの合間、久しぶりに音也とサッカー。

ダンスも歌うのも好きだけど、音也とのサッカーもすげー楽しい!

時間が許す限りボールを追いかける。

「音也、パス!」

「おー!…あれっ?」

珍しい。簡単なパスボールを音也がミスした。

つーか、なんか動き悪い?

なんか、ソワソワして落ち着きないっていうか…。

…もしかして、この動き……。

「音也、一回中断!」

「えぇっ!なんでなんで?もっとやろうよー!」

気づいてねーのか?

「トイレ、いこーぜ。」

「えー…、俺大丈…、…!」

やっと気づいた。

「しょ、翔っ…。」

「ん、早く行こうな。」

音也の手をひいてトイレに向かう。

急いだ方がいいな…。

音也の焦りが繋いだ手のひらから伝わってくる。

サッカーに夢中になりすぎて気づかないとか、子どもみてぇ。

音也とは同い年だけど、たまに弟みたいに思っちまうことあるんだよな…。

「音也ー?まだ平気か?」

声をかけたのと同時にピタリと音也の歩みが止まる。

…あー……。

「ふ…うぅ…、ぐす…っうぇ…。」

音也の足元には大きな水たまり。

地面の砂の色を色濃く変えて広がっていく。

Tシャツの裾を握って、俯いて嗚咽を耐える音也。

「…全部出たか?」

繋いだ手はそのままに音也の顔を覗き込む。

「んぅ…、うぅ…うぇぇっ…。」

ポロポロと頬を伝う大粒の涙。

「泣くな…?」

ぽんぽんと頭を撫でて、再び音也の手をひいた。
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