novel
□warmer,warmer
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「じゃあ、また明日ね、イッチー。」
「あ、あのっ、待ってください!」
久しぶりのレンとの撮影。
マスターコースの僚まで一緒に帰ってきて、軽く手を振り、自分の部屋に入ろうとするレン。
一度閉じかけた扉に慌てて声をかける。
「ん?どうかしたかい?」
「そ、その…っ。」
何気なく言ってしまえればいいのに、速くなる心臓、震えそうになる声。
い、言わなくては…。
「お…、お手洗い、貸してください…っ。」
「へ…?」
ポカン…とした顔。
当たり前です、私たちの部屋は後数分も歩かない距離にあるのです。
私だって、何を言ってるんだと思いますよ。
でも、今はそれさえも遥か遠い距離に感じる程の尿意に襲われていて…。
「れ、レンっ…。」
「あ…、あぁ、うん。どうぞ?」
私の状況を察してくれたのか、部屋へ通してくれる。
こういう時だけは、レンの勘の良さに助けられます。
余裕がないことがばれるのは恥ずかしいですが、廊下で…なんてこと考えれば、レン1人に知られることなど、どうってことないです。
…と、思いたいです。
「すみません…っ。」
レンの前を通り過ぎてお手洗いへ向かい、ドアに手をかける。
ガチャッ
…?
ガチャガチャッ
……⁉
「レンっ、開きませんっ…!」
「へ⁉聖川いないはずだから…、ランちゃん?…あぁ、イッチー泣かないで…、ランちゃんすぐに出てくるからね…。」
頭を撫でるレンの手を振り払う余裕さえなくて、ついに私の両手は前をきゅっと握る。
トタトタと床がなるのも構わず、足踏みも止められない。
「れ、ん…っ。」
「大丈夫大丈夫…。」
熱い雫がこぼれ落ちて、頬を濡らす。
押さえる手がじんわりと湿り気を帯びているのは、汗なのか、それとも…。
……考えたくもありません。