novel

□静かな夜に
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「ふぁ…。」

時計を見れば、とっくに日付は変わってる。

大きなアクビを隠そうともせずに、先客のいるベッドに潜り込んだ。

収録が押しちゃって、ランランを泊めることになったのはいいんだけどさ…。

ぼくがお風呂に入ってる間に、ベッド取られたんだよ⁉

スヤスヤ気持ち良さそうな寝顔見たら、起こす気もなくなっちゃったんだけど…。

くすん、ぼくちんのお家なのに…。

明日怒られる覚悟で、ランランの隣りに体を横たえる。

ぼくちんだって、ベッドで寝たいんだい!

今日の収録、体使うやつでハードだったし、良い感じに眠気が襲って来る。

もひとつアクビをしてから微睡みに身を委ね…

「ん…。」

「ランラン…?」

突然体を起こしたランランに、閉じかけていた瞳を再び開く。

「……。」

ぼーっと宙を見つめて、そのまま一時停止状態。

え?ランラン?

寝ぼけてらっしゃる?

「…おしっこ……。」

なーんだ、トイレか。

プププっ、おしっこ〜なんて、子どもみたいっ。

メイクも髪のセットもしてないランランは、だいぶ幼く見えるけどね。

「ん…。」

ぽふり、と体をベッドに埋めたランラン。

え…?

ら、ランラン、さっきおしっこって…。

……え?

「ら、ランラ…、………⁉」

体を揺すって起こそうと手を伸ばすと、ベッドについた片手には確かに濡れた感触。

これって…。

「ランランっ!ランラン起きて!」

「…んだよ、れーじ…。」

何度も名前を呼んで、体を揺すって、終いには叩くようにして。

やっと薄ーく目を開けたランランは、気だるげで不機嫌。

うん!睡眠のジャマされるのキライだもんね!

知ってるよ!

でも、今はそれどころじゃない。

「ランラン?風邪引いちゃうから着替えよ?」

出来るだけ何でもないことのように言う。

「は…?何言って…。……え…。」

気づいた…、かな?

呆然としたまま動かない。

「早くシャワー浴びておいで?ね?」

俯いて縮こまった背中に手を添えると、小さく震え出す。

冷えちゃったかな…。

「ほら、ランラ…。」

そっと顔を覗き込むと、こぼれ落ちそうなほど涙を溜めた瞳が見えた。

背中が不規則に揺れるのも、泣くのを耐えているせいみたい。

「ラーンラン。大丈夫。ね?」

そっと手を引くと、バスルームへ誘う。

「着替え用意しとくから、ごゆっくりどうぞ?」

本当は側にいたいんだけど、ランラン、強がっちゃうから…。

ワザと少しおどけて言うと、パタンとドアを閉めた。
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