novel

□君の手のひら
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びしょ濡れのズボン。

涙でぼやける視界。

瞬きをひとつすると、涙がポロリとこぼれて困ったように笑う翔の顔が鮮明に映った。

「おーとや、もう泣くなって…。」

「ぐすっ…、だってっ…。」

翔がこんなに優しいから余計に泣きやめなくて。

涙は俺の頬を、あごを伝って落ちていく。

あの後、翔が手を引いて連れてきてくれたトイレの個室に2人で入って、翔はずっと俺の背中をさすってくれてる。

「早く着替えような…。着替え取って来る間、待ってられるか?」

え…、1人で…?

「あー…、トキヤに電話して持ってきてもらうか!」

くしゃっと頭を撫でられて、揺れた衝撃でまた涙が一粒、ポタリ。

あぁ、もう…。

なんで俺の一瞬の表情でわかってくれちゃうんだろ。

1人は嫌だって。

翔に側にいて欲しいって。

「ふぇ…、翔…っ。」

「ほら、泣くなー。」

くしゃくしゃと撫でられるのが心地良い。

俺よりも小さいはずの翔の手が、なんだかすげぇ大きく感じたんだ。
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