Strawberry mix
□魔法の言葉
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「んふふ〜……壇く〜ん」
「え…ええっと……離して…ほしいです…」
「いっやぁ〜」
「ええ!? そ、そんな…」
こう見えて、夏希は早起きが得意なんだよね。まず初めに朝が苦手な心愛たんを起こして〜、それから急いでマイダーリン壇くんの元へ向かって抱きついた。
「でもでも〜…壇くんってすごいね!」
「え? すごい…ですか?」
「うん! だってだって、こんな朝早くに起きて練習してるし、朝ごはんまで手伝ってくれようとしてるんだもん! これってすごいことだよ! 壇くん偉いっ! さすが夏希の王子様っ!!」
「せ、瀬戸内さん…」
「あ、やだ。夏希って呼んで?」
「で、でも…」
「あのね……大好きな人には名前で呼んで欲しいの。ダメ…かな?」
ちょっと困った顔をする壇くんに、なんだか申し訳なく思ってきた。なんか夏希ってわがまま。困らせたくないのに、どうしても呼んで欲しいって思っちゃう。
あーあ。ダメだなぁ。本当、心愛たん尊敬するな。
「やっぱり、今のな――」
「いいですよ」
「だ、だよね! ごめ――え?」
聞き間違い…かな? 今、いいって聞こえたような…。思わず頬を抓ると痛くて涙が出た。突然のことに壇くんはあたふたしながらもハンカチを差し出してくれた。それにまた胸がキュンとした。
「ほ、本当に…いいの? 聞き間違いじゃない…?」
「ほ、本当です。そ、その……夏希…さん」
「!! うっ…ううっ…」
「ええ!? 夏希さん?! どうしたですか? ボク、何かしましたですか!?」
「そ、そうじゃ……なく、てぇ〜っ」
ボロボロと涙が溢れてくる。壇くんがくれたハンカチがあるけど、もったいなくて使えない。
でも伝えなきゃ。壇くんが心配してる。だから、ちゃんと伝えなきゃ。
「うれ、しいっ…の…!」
「え…?」
そう、嬉しかった。名前で呼んでくれて、すごく嬉しかったの。さん付けだったけど、好きな人に呼んでもらうと、すごく嬉しい。魔法みたい。だってキミへの好きがもっと大きくなるんだもん。もうどうにかなっちゃいそう。でも、すごく幸せなんだ。
「だから、もっと呼んでね! 王子様!」
「あ――」
「おーい! 夏希ちゃーんっ」
「え…?」
突然聞こえた声に、壇くんと一緒に振り向いた。そこには笑顔の瑠璃先輩と、ニッコリと笑う霞先輩がいた。……何でだろう? 笑ってるはずなのに、笑顔なのに霞先輩の後ろに般若が見える。
今度は違う意味で涙が出そうだった。