Strawberry mix

□セピアの残像
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「え……静先輩が!?」



もうすぐ夕飯を作る時間だからと、おっしーと一緒に食堂に入れば……慌てた様子の瑠璃先輩がいて、静先輩が失踪したときいた。
それに思わず目を見開けば、次の瞬間には瑠璃先輩の頭に景ちゃんがチョップをかましていた。





「いたっ! ちょ、何するんですか跡部さんっ!」


「馬鹿野郎。お前こそ何紛らわしい言い方してんだ。いつ成瀬が失踪したよ」


「だってまさにそんな感じだったじゃないですか! 乙女心は秋の空! ちゃんと意をくんであげないとモテませんよ!?」


「何言ってんだ……」


「あ、あは……あはははは」


「夏希。無理して笑わんでええで」



二人の漫才のような掛け合いに、ここは一応笑っておくべきだろうかと思い、笑ってみたけれど……乾いた笑いしか出てこなかった。
うん、ごめん。夏希にはツッコミスキルは備わってなかったよ。心愛たん、ヘルプミー。





「で、本当はどうなん?」


「ああ。頭を冷やしに行っただけだろ。その内戻ってくるはずだ。念のため五百蔵が後を追った」


「ああ、五百蔵さんなら大丈夫やろ。さ、夏希。ぼーっとしとかんと夕飯の準備してくれるか?」


「え、あ……うん」


「あ、夏希ちゃん一人じゃ大変だろうから……私も――」


「望月は食器を頼む」


「え、即答!? 私だって心愛先生の指導のお蔭で目玉焼きくらいなら――」


「それは料理とは認めねぇ。しかも心愛が立ち会ってようやくってレベルだろうが」


「ううっ……わ、分かりましたよぉ」



内心で景ちゃんにグッジョブと親指を立てる。
主戦力の心愛たんと静先輩が抜けて、それをカバーしてくれてる霞先輩までいない上に、瑠璃先輩の面倒まで見せられたら夏希が死ぬ。
第一、この合宿の人数分を実質4人で作ってたのが異常なんだ。というか、それができたのはあの人外レベルの二人がいてこそだから……どう頑張っても夏希一人じゃ下ごしらえと大差ないよ。
どうしようかと途方にくれていると、トンと肩を叩かれる。





「しゃーないから、料理できる奴に声かけてみよか。心愛たちが作るみたいにはいかんと、マシなのは作れるやろ」


「お、おっしー……」


「せやから、後は任せたで」


「うんっ」



なんだかんだいって、やっぱり優しい。
何気にできる人がいるみたいだし……これは何とかなりそう。
未だにじゃれ合っているようにしか見えない景ちゃんと瑠璃先輩にはいい気はしないけど……とりあえず、目の前の仕事を精一杯頑張ろうと思った。
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