Strawberry mix
□個性派揃い
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「着いたな」
車から出るやいなや、太陽を眩しげに手を掲げて見上げた跡部の第一声はこれだった。
「……主催したお前が一時間も遅れて来ておいて、第一声がそれか」
手塚の咎めるような視線と口調に周りを見渡せばなるほど。氷帝以外はとっくに集まっていたようだ。
「固いこというなよ、手塚。こっちにも色々――」
「景ちゃん知ってる? 言い訳ってみっともないんだよぉ〜」
「……悪かった」
やはり跡部も単純だ。変にプライドが高いから無様な真似はしたくないらしい。
その様子に夏希はクスリと笑うが、ふと跡部の向けた視線の先を見てその笑みを消した。
「夏希?」
「あ…」
「どうした?」
「な、なんでもないよ!」
「ならいいけどよぉ……他の奴ら、中に入ってってるから俺たちも行こうぜ!」
「ええ!? い、いつの間に…」
「お前がぼうっとしてるからだよ。ほら、さっさと行くぞ!」
「う、うんっ!」
差し出された手を迷いなく掴むと走り出す。先ほどの光景がいやに頭から離れない。最悪の事態を考えると、胸が締め付けられる。
あの子の泣き顔はもう見たくない。無意識に握った手に力が入る。
あの子が哀しまない未来を……切に願った。