Strawberry mix
□理想の王子様
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「キャー! 自己紹介のときから思っとたけど、やっぱり間近で見てみると5割増しで可愛いわぁ!」
「浮気か小春ー!!」
「一氏くっつくなや!!」
「こ、小春ぅ〜!」
「こら! 心愛ちゃん固まっとるやろ! ごめんな、心愛ちゃん」
「……別に、っ!?」
目の前で繰り広げられるホモップルの会話に目が半目になっていると、突然両手が包まれ、びっくりすると同時に、ブンブンと手を上下に振られた。
「ご飯作ってくれた子やろぉ〜? ごっつうまかったでぇ! ワイ、遠山金太郎いいます! よろしゅうよろしゅう!」
「……柊心愛」
「心愛やな! ワイは金ちゃんでええで!」
「ああ、じゃあ猿で」
「ブフッ! アカン……心愛ちゃんおもろい…! 自分、お笑いのセンスあるで…!!」
「いや、別に嬉しくない」
「笑かしたもん勝ちやぁ! って、ワイ猿やない! いーやーやー、金ちゃんって呼んでぇなぁ〜!!」
「金ちゃん! 心愛ちゃんを困らせたらアカンで」
「しーらーいーしー! でもワイ猿やないもん!」
「そぉか。なら……仕方ないな」
「ヒッ! ま、まさか……」
さっきまでの威勢は何処へやら。ブルブルと怯えだす猿に私も一瞬身構える。スルスルと包帯を外していく白石蔵ノ介に少しの恐怖を覚えた。
「毒手いややぁ! ワイ、ええ子にするさかいっ」
「その約束、よぉ覚えとくんやで」
「お、おん…」
「な、なんなの…?」
思わず口を挟めば、猿は恐怖に震えながら口を開いた。
「白石はなぁ……毒手持ってんねん」
「毒手…?」
「ワイ……漫画で読んでんけど、焼けた砂と毒を交互につけ続けて、二週間くらい苦しみ続けると、毒が染みて、その手に触れし者は死にいたるっちゅうやつらしぃんや……」
「え……」
一気に血の気が引くのが分かった。え、ちょっと待って。まさか……ここの部長がそんなものを持っていただなんて…! 通りで怪しいと思った。だって包帯をずっと巻いてるって……あきらかに怪しいもの! いや、でもでも……まさか――
「おい、お前――」
「ひゃあっ!!」
いきなり声をかけられて驚いて肩まで跳ねた。慌てて振り向けば、そこには冷めた目で見る財前光がいた。
「な、なによ!?」
「いや、お前こそなんやねん」
「はぁ!? べ、別に毒手怖いとか思ってないし? 第一そんなの信じてるわけないじゃない! ばっかじゃないの!?」
「その言葉そのままお前に返すわ。そして一言も毒手なんて言ってないで」
「あ……」
「アホくさ…」
「っ〜〜!!」
今更ながら墓穴を掘ったことに気づいて、顔に熱が集まる。もうやだ。帰りたい……。
「お前もその内毒手の餌食になるかもしれんな」
「え゛」
「あ〜あ。部長怒らせたら面倒やからなぁ。ま、せいぜい気をつけるんやな」
「……」
その言葉で、私は今後一切白石蔵ノ介には逆らうまいと決意した。
もちろん、真剣な私には財前光がそれを見て笑っているなどこれっぽっちも知らなかった。
そして――
「……金太郎、なら……呼んであげる」
「ホンマ!?」
「え…ええ」
「金太郎でええよ! 約束やで! 心愛!」
「う、うん…」
私と猿……否、金太郎との間に妙な友情が芽生えた瞬間でもあった。