Strawberry mix

□心の闇
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「私たちの得意分野を担当しましょう…?」



玉拾いをしながら、さっきの天使と見間違うような美少女……確か柊心愛だったか。その子のことを考えていた。あの子の提案は一番効率の良いものだったと思う。だからみんな納得して分担している。
だけど、どうしてか……あの子の表情が忘れられない。







「(いったいどうしたっていうのさ…)」



分からない。あの子の笑顔に邪気なんてなかった。むしろあの子は完璧なまでの微笑で、女のあたしでも綺麗だと思わせたほどだ。
現に、あの子はその類稀な容姿で会場全体の空気まで変えた子だ。何の心配もない。悪い子ではないのは確かだろうから。それなのに――







「(なのに…どうして――)」


「っあぶねぇっ!!」


「は…」



考えることに集中しすぎた。練習によって外野へと出たボールが真っ直ぐに飛んでくる。
硬式テニスだからボールは勿論硬い。当たるととんでもなく痛いだろう。
そこまで高速で考えて、たどり着いた対策は……








「よ! っと」


「は…!?」



バック転だった。






「あー…ボール向こうに入ったな…ごめん、ちょっとダッシュで拾ってくる!」


「お、おう…」



帽子を被った氷帝の選手……確か宍戸だったか。宍戸に一応ことわってボールを取りに行く。
そういえばあの子は宍戸に懐いていたような気がする。朧気な記憶を必死に手探り寄せれば、確かにあの子は笑っていた。
そして思い出したと同時にあたしは気づいてしまった。










「あー…そっか……あの子のアレ、作り笑顔か」



人は見かけによらないとはこのことか。可愛い顔して恐ろしい子だ。
無意識に乾いた笑い声がでた。
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