Strawberry mix

□今から、ここから
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食べ終わる人がちらほらと現れだした中、私はデザートの杏仁豆腐を頬張っていた。
静が作ってくれた杏仁豆腐は絶品で、自分でもご機嫌なのが分かる。





「心愛ちゃん」



そんな中、名前を呼ばれて横を向けば、常時微笑みを絶やさない青学の天才がいた。





「少し話がしたいんだけど……いいかな?」



私の手元にある杏仁豆腐を見ながらそう尋ねたこの人の名前は……そう





「……不二周助」



口の中にあった杏仁豆腐をゴクリと飲み込んで呟けば、不二周助がクスリと笑う声が聞こえた。





「僕のこと知ってるんだ。嬉しいなぁ」


「……青学の天才にしてbQ。トリプルカウンターとくれば、マネージャーとして注目せざるをおえない」


「手厳しいな。僕としては君自身に興味を持って欲しかったんだけどな」


「選手としては私自身、一目も二目も置いていますよ」


「でもそれもマネージャーだから……でしょ?」


「……それ以外に何があると?」


「クス。君にはまだ早かったかな? 気にしないで」



お子様扱いに若干イラッとしながらも、表では平静を装う。
こういう人は顔に出したらお仕舞いだ。この合宿中ずっとおもちゃにされるのは間違いないだろうから。





「……で、用件は? 私に話があるんでしょう?」


「ああ、そうだった。ごめんね、君と話すのが楽しくて、危うく忘れるところだったよ」



相も変わらず微笑みを絶やさない不二周助に、内心で「ウソばっかり」と毒づく。
でも言わない。言えばこの人の思う壺だということくらいお見通しなんだから。





「で、本題なんだけど――」


「望月瑠璃……でしょ?」


「なんだ。分かってたんだ」


「青学の人が私に話とくればそれしかないから」



なんだかんだ言って、あの人は愛されている。大切にされてる。
まぁ、マネージャーとして築き上げてきた絆としては当然というところなのかもしれないけれど。





「クス。分からないよ? 君に気があるのかもしれない」


「まさか。こんな可愛げのない子に? 私が男の子だったなら即願い下げです」


「僕はかわいいと思うけどな」


「それは容姿が、でしょう?」


「確かに魅力的だと思うけど、君のその性格も含めて僕はかわいいと思うよ」



ありえないと鼻で笑った私に、不二周助はこともなげに、当然のように言った。
――呑まれるな。内心動揺で一杯だが、顔に出すわけにはいかない。
自らを奮い立たせるように気丈に不二周助を睨みつけた。





「怒らせちゃったかな? 少しいじめすぎたみたいだね。ごめんね」


「……べ――」



別にと言おうとした所で、私たちの間に割ってはいる声が聞こえた。
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