Strawberry mix

□セピアの残像
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「僕は覚えてるよ。1年前の……あの日のことを」



分からない。不二周助が言った一年前の事。
どうやら私は……一年前に不二周助と逢ったことがあるらしい。
そしてその時、私は記憶に残るほどのことをした……みたいだけど、残念ながら欠片も覚えていない。
現に、練習試合が初対面だと思っていたから。





「僕にとっては大事なことでも、君にとっては些細なことだから……覚えてなくても仕方ないんだよ」



私の表情から察したのか、少し残念そうに笑った顔が脳裏を過る。
一体、一年前の私は何をしたのだろう……?
一年経った今でもずっと覚えているってことは、それだけ大事なことのような気がする。
でも、生憎私はまったくと言っていいほど見覚えがない。だから、こうして悶々と一人で考えるしかないのだ。





「……あーもうっ! なんなのよ……」



気になって気になって仕方ない。
この合宿が始まってからというものの、気になることがありすぎて頭が追い付かない。
財前光のことだって、まだ自分の中でけじめをつけられていないし、景吾と望月瑠璃のことだって認められない。夏希のことも気になるし……切原赤也とだって、近いうちに話さないといけない。
やることが多すぎて、もうパンクしそう……。






「とりあえず……シャワー浴びよ」



フラフラと覚束ない足取りで備え付けのシャワールームに入る。
シャワーの温かい湯が、少しだけ心を落ち着かせてくれた。
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