Strawberry mix

□い
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「ハァ……疲れた」



いつものポジティブさはどこへやら。今日ばっかりは疲れた。
折角壇くんが手伝いに来てくれたけれど……今の夏希にとって、それは嬉しくない出来事だった。





「……夏希のばーか」



一方的に想いを告げて、一方的にさよならした。
もうバカとしか言いようがない。きっと、心愛たんがこのことを知ったら、「ばっかじゃないの」って呆れた目を向けてくるんだと思う。でも今その心愛たんはお休み中だ。きっと、気を張ってたんだと思う。気丈に振る舞ってはいても、やっぱり心愛たんは心愛たんだ。繊細な子だから……だから夏希は、いつだって心愛たんを護りたいって思う。





「なーにがバカなんじゃ?」


「ッ……仁王、先輩……」



急に声がかかって、振り向けばそこには不敵な笑みを浮かべた仁王先輩がいた。





「仁王先輩には関係ないでーす! それより、何か御用ですか?」



夏希は仁王先輩が苦手だ。
この人の目は、何でも見透かしていそうだから。ペテン師の異名を持つのだから、当たり前と言えば当たり前だけど……やっぱり苦手だ。





「冷たいのぉ。別に、お前さんがそこにおったから声を掛けただけぜよ」


「要するに、特に意味はないってことですよね?」


「まぁ、そうなるな」



思わずため息が出そうになる。
なんだか、仁王先輩と話していると気力が削がれるんだよね。
この人とペアを組める柳生先輩ってすごいと思う。さすが紳士。





「用がないならもう行きますね。心愛たんのことも心配ですから、様子見に行かないと――」


「本当に、柊が心配なんか?」



そのどこか笑いを含んだ言い方に、思わず眉根を寄せた。
これじゃあまるで、夏希が心愛たんを心配してないみたいじゃんか。





「心配に決まってるじゃないですか。大事な親友なんですから」



少し苛立ちを含んで、強くいえば……何故か仁王先輩の笑みが濃くなった。
でもそれは、嘲笑も含まれているように感じる。なんなの、一体……。





「親友、じゃのうて……神様≠フ間違いじゃろ?」



今度はそれに目を見開いた。
神様? 何を言っているの? 心愛は夏希の……あたしの親友なのに。
どうしてそんなことをいうの?
あたしたちの友情を……疑ってるの?
そう思えば、一気に怒りが込み上げてきた。
だってあたしにとって心愛は一番大事な人。心愛のためなら、あたしはなんだってする。
心愛も普段はそっけないけれど、なんだかんだいってずっと一緒にいてくれる。ずっとそばにいるからこそ分かる。あたしがそう思うように、心愛だってあたしを親友だと思ってくれていること。
それなのに、ちょっと一緒に過ごしたくらいの部外者に、あたしたちのことをとやかく言われるいわれはない。気が付けばあたしは、仁王先輩を鋭い目で射抜いていた。
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