【短文】

□【ねぇ、俺が飽きるまで遊んで?】
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『あ、あん、あああっ』

『ひあっ、やん、らめぇっ、ん、やらぁっ!!』


嗚呼、またか。
飽きた。
つまらない。
何、勝手に一人で悦がって、感じてるんだろう。
オレは、全然気持ち悦く無いのに。
面白くない。


『ね? 優斗ぉ〜、欲しいの〜』

『勝手にすれば……』


ヤる気が起こらなくて、女の部屋のベッドでうたた寝していたら、盛った女が勝手に、オレのちんこをしゃぶって勃たせて、上に乗り掛かる。
そして『あんあん』一人で啼く。
何が楽しいのやら。

男を相手にしてもそうだ。
最初は、抵抗するくせに、何時の間にか豚みたいに鳴いている。

気の強い男でも女でも、1ヶ月とて持たない。
あっと言う間に瓦解し、淫乱に成り下がる。
挿入して腰を振れば、一人勝手に悦がり、涎を垂らす。
アへ顔なんて、見た瞬間萎えた。
気持ち悪い。

何、一人満足してんだか……。





「あ〜あ、本当セックスなんて、つまらない。一人よがりで、勝手にアへるし」

「……優斗さん。それ、贅沢な悩みですね」


私立愈蘭(ゆらん)学園、高等部。
鷹城 優斗(たかじょう ゆうと)の父親が理事長を務める学園。

高校一年生の優斗は、S組というクラスに在籍し。
このクラスは、学力優秀にプラスし、経済に影響を及ぼす程の資産家の子どもしか入れない様になっていた。
クラスには、総勢8名しかおらず。
全ての生徒が、既に外国の学校で飛び級し、大学を卒業している者達だった。
では、何故其れほどの学力を持ちながら、この国の高校に入っているのかと言うと。
それは、この国での高校生活など、一般の経験をして欲しいという親の考えからだった。

出席日数は然程問題にならない中、面倒臭いと思いながらも、各々登校する日々。
親に逆らえば、もっと面倒な事になると彼らは分かっていたからだ。

椅子に座り、机に腕を預け、顎を置いて、だらけきった状態になっていた優斗は、前の席に座り、こちらを向いている友人の一言にピクリと反応を示し、上を向いた。


「え〜、だって本当につまんないんだよ」

「それは、優斗さんがテクニシャンだからじゃ無いですか?」

「う〜ん、どうだろ〜」


首を傾げる優斗に、友人であり後々、優斗の補佐をする事になる、(みや)が自身の頬を掻く。


「最初は楽しんでるんですよね?」

「うん、そうだよ〜。最初に手を出した時はね、楽しいんだけど。でも酷い場合は、最初っから『あんあん』鳴いて淫乱になっちゃうんだよ〜」


美人から出るには、とても嘆かわしい言葉がポンポンと出る。
宮は苦笑を洩らす事しか出来なくなった。
宮が不平不満を言わないのは、才能溢れる優斗が、己より上の立場である事と、何だかんだで彼が憎めないキャラをしているからだ。


「こないだなんか萎えてさ〜、ヤる気無くなって抜いたら『もっと〜』とか言って来るし。腹立ったからペシッて叩いちゃったよ〜」

「叩いたらいけませんよ」

「宮、お母さんみたい」


宮に注意された優斗がハニカミながら、ヘラッと笑う。
その顔は、子どもみたいだった。
ペシッと叩いたと軽く言っている優斗だが、優斗の天然な残虐ぶりを知っている宮は、真剣な面持ちになっていた。


「で、全治何ヵ月ですか?」

「ん〜、知らないや」


興味無い事には、とことん興味が無い性格の優斗。
自身が病院送りにした人間なぞ、最早、何の食指も動かなかったのだろう。


「ゆうゆう。そんな、ゆうゆうに耳寄りな情報があるよ〜ん!」


今まで、黙って聞いていた優斗の幼馴染みで情報通なA組の快理(かいり)が、横から会話に参戦する。


「え、何なに? 快理」


優斗が興味を示し、眸がきらんっと光った。


「『孤高の皇帝』って知ってる?」

「ああ、その事ですか……」

「え? 何それ?」


快理の話しに宮が淡々と返すも、何の事だか分かっていない優斗は首を捻った。


「この学校の生徒なのに、不良っぽいんだって。しかも、資産家の息子じゃ無いのに、何故かこのクラスなんだよ。謎じゃ無い?」

「特別枠なんてあったかな〜」

「私の知る限りでは、無い筈ですが……」


資産家の子どもでは無いにも拘わらず、S組。
父親から特別枠の話しなど聞いた事も無かった優斗は、謎に挑みたくなった。



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