【短文】

□【犬猿の仲に愛は芽生えるのか】
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この学園の生徒会会長と風紀委員長。
この二人は、すこぶる仲が悪かった。

切っ掛けは何だったか。
好きな女を寝取られたからか。
学園での抱かれたい男No.1とNo.2を競っているからか。
学力や家柄が変わらないからか。
互いの性格が気に食わないからか。
原因は様々あれど、これだ……という明確な原因は、今はもう分からない。
周りもだが、当の本人たちも切っ掛けは何だったのか、覚えていなかった。

会長は、委員長の乱暴で品位の無い性格が兎に角赦せず。
委員長は、会長の矜持の高さや常に己が正しいといった振る舞いを行うところが気に食わないでいた。

顔を合わせる度に喧嘩腰になる二人。
殴り合いの喧嘩はしないものの、口論には頻繁になっていた。

そんなある日の放課後。
会長に用事のあった委員長が、生徒会が使っている部屋へと仕方無しに赴いた。
委員長は、怠い、面倒臭いと思いながらも、部屋のドアをがらっと開けた。

しかし、部屋には会長だけが居らず……。
副会長たちによると風紀委員長の親衛隊たちに話があると言われ、場所を移動した≠ニいう事だった。


『あなたの親衛隊でしょう? 知らなかったんですか?』


己の親衛隊の行動を把握していない委員長に、副会長が冷ややかな目線を向ける。
委員長はそんな目線を一瞥し、何も言わず、部屋から出た。
然うして、会長を不本意ながらも探し始める事にした。


──ったく、親衛隊の行動なんぞイチイチ把握してるかよ。


委員長は、心の中で副会長への悪態を吐いた。
切れ長で吊り上がった目は苛立ちからか、益々吊り上がっていた。


──あのダセェ七三ヤロー、何処連れて行かれやがった。


眉目秀麗なのにも拘わらず、黒髪のピッチリ七三な会長。
しかも、彼は伊達の黒縁眼鏡を掛けていた。
どうやら寮に帰ってから着る私服もダサい様で。
そんな彼を委員長は見下し、揶揄った。

因みにだが、委員長自身の髪色はブラウンで、彼は制服を着崩し、スラックスのポケットに両手を突っ込んでいた。
会長は風紀委員長である彼のその姿にも腹を立てていた。
風紀にそぐわぬ姿だと。
生徒の見本であるべきものの姿では無いと。
やはり、二人はとことん考えが合わなかった。



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