【短文】

□【田所家の兄弟事情】
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田所(たどころ)家の次男である咲良(さくら)は、非の打ち所が無いほど優秀だった。
二物も三物も与えられた彼は、当然ながら文武両道で。
中学生独特の幼さは残るものの、筋肉の付き始めた体躯を持ち。
二重の垂れ目に、それを縁取る黒く長い睫毛。
猫っ毛な黒い髪に、周りを魅了する柔和なおっとりした顔。
身長は167センチと発展途上ながらも、頭の成長は早いのか、中学では期待される程、成績も良い。
そして、そんなハイスペックな……未来のスパダリの彼には兄が居た。
田所家の長男、日和(ひより)
頭の出来が悪い彼は制服であるブレザーを着崩して、高校へ登校していた。
髪の色は赤に近い茶ながらも、不良という程では無い。
が、しかし、そこそこ遊び、友達とは馬鹿騒ぎをする事も多々あった。
そんな彼が弟に唯一、優っているところと言えば体格で……。
弟を見下ろせる180越えの身長。
しなやかな、筋肉の付いた躯。
影が出来る程の腹筋。
頻繁に外に出る事から日にも焼けた肌は、綺麗な茶色をしていた。

二歳違いだと言うのに何時からか、二人はあまり話さなくなった。
弟である咲良が『お兄ちゃん』と慕い懐き、後を追っていたのは小学生までだった。
距離を置いたのは、咲良からで。
彼は、中学に上がる頃には兄から話し掛けても『うん』や相槌だけで終わる様になっていた。

日和は最初、そんな弟にちょっかいを掛けていたが、うざがられ。
反抗期かと、仕方無しにしつこくするのを止めた。
落ち着けば、また元のように仲良くなれるだろう……と、そう思っていた。
しかし、それから三年経ち、日和が17歳。
咲良が15歳になっても、彼らの関係性は変わらなかった。



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