【短文】

□【人の話を聞きやがれ】
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「えへへ、ありがとうございます。これなら飲めます」

「へいへい」


膝を立てながらテレビのリモコンを、ピッと押した二階堂が、適当に返事をし、残ったビールを煽り飲む。
然うして、その缶をグシャッと片手で潰し、テーブルに置き、用意していた二本目に手を伸ばした。


「先輩、乾杯しましょ、乾杯っ」


プシュッと缶を開けたところで、大倉が酎ハイの缶を前に差し出した。
二階堂は、今更……と思ったが、目の前の大倉のニッコリとしたあどけない顔に、仕方ないな……と、ビールの缶を前に差し出した。


「乾杯」

「かんぱーいっ!」


互いに乾杯の音頭を取り、カンッと音が鳴る。
二人、同時に飲み口に口を付け、ぐびぐびっ……といっぱい。
口を離し「ぷはー!」と言ったのもほぼ同時だった。


……2時間後。
コンビニで酒の追加とツマミを買い、程好く酔いの回った男が二人。

卑猥な話しをし始めた。


「だからな、アナルセックスしたいなら、そう言った風俗行けって」

「でも、彼女居るとそれは浮気になるじゃ無いですか〜」

「じゃあ、そう言うのがイケる彼女作れよ」

「同じ年頃で俺の性癖に付いて来れる子が今まで居なかったんすよ〜」

「頑張って探せよ」

「う〜。居るかなぁ」

「つーか、お前、付き合うまでが早すぎんだろ。きちんと相手の事、好きになってんのかよ」


別れて、告白されて、付き合って。
どう考えてもその一連が早すぎる。

別れた時は、ショックなのか泣き付いて来たりするが、気付けば、一週間以内に新しい恋人が出来ている。
これだと『本当に好きだったのか?』と言いたくなるのも当然だった。


「え? や、えっと、うーん」

「あー、お前もしかして、付き合ってから好きになれば良っか〜なノリか?」

「……う゛、駄目ですかね?」

「や、別に良いんじゃねぇの。そう言うのは人それぞれだしな」


ズバリ的中だったのか。
大倉が、眉を下げつつ肯定した。
二階堂は大倉の答えに対し、怒りも説教もせず淡々と返事をした。


「先輩、俺、本気で人の事好きになった事がまだ無いんすよ」


サラミを食べた大倉が、伏せ目がちにポツリと呟く。


「あ〜、だろうな」


それを聞いた二階堂は、納得とばかりに相槌を打った。

大倉が本気で付き合っていない事は、この半年を見ただけで、充分、分かる。
そもそも、本気であればこんなアッサリと次……とは為らないのだから。


「俺、性欲強いんで、ついつい彼女出来たら『やった! エッチ出来るー!』てなっちゃうんですよね」

「お前な、女はお前の性奴隷じゃ無いんだぞ」


流石に、これは駄目だと思ったのだろう。
二階堂が注意する。
浮気はしないと言っても、これでは女性の気持ちが蔑ろにされている感が否めなかった。


「先輩」

「ん? 何だ?」

「性奴隷=c…って何か良い響きっすね」

「…………」


駄目だコリャ。
若干、真面目な顔付きになったかと思えば、この発言。
呆れるしか無い。


「あー、先輩、すんません、何か仄かに酒が入った状態でエロ話ししてたんで、ヤバいっす〜。てか、性奴隷でいけない妄想しちゃいましたあ」

「は?」


まあ、今はまだ若いからエロ中心なのは仕方が無いのだろう。
年齢を重ね、性欲が落ち着けば、きっと心を重んじる様になる。
そう思考していた二階堂だったのだが、大倉のゴソッとした動きに、ギョッとなった。


「ちょっ、ちょっと、待て待てっ! お前っ!」

「先輩が悪いんすよ〜。性奴隷なんて言うから。手足拘束されて、ズコバコされてる女を想像しちゃったじゃ無いっすかー」


ズボンのベルトをガチャガチャ外しながら大倉が、ふふふと不敵に嗤っている。
その姿を見た二階堂の頭が急激に冴えて行った。


──コイツ、目がイっちゃってんじゃねぇかっ!


「先輩、エロDVD持って無いっすか〜?」

「莫迦かっ! 俺の家でヌこうとすんな!」


完全に前を寛げた大倉が、前を弄り始めている。
ローテーブルごし故に、その全貌は見えていなかったが、動きが完全にアウトだった為、二階堂は慌て顔色を悪くした。


「先輩、俺、こうなるともう無理っす〜」

「あ゛ああああ〜っ!! ちょっ、止めろ、絨毯汚す気かぁあああ!」

「あ、先輩。俺の、やっぱりデカイっすか?」

「って、見せて来んな、気持ちわりぃい!!」


立ち上がった大倉が、じわりじわりと対面に居る二階堂に近付いて来る。
にじりより、完勃起した股間を見せてくる大倉に、二階堂は「ギャー!」と思わず汚い悲鳴を上げた。



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