【短文】
□【お前のち●こを貸せ】
2ページ/7ページ
「るせぇ、マジでもう無理だって言ってんだろっ!」
拒否され、星来がその場にへたり込む。
もう本当に限界だった。
服が擦れるだけで、ビクビクと躰が反応する。
肉棒の先っぽからは、我慢汁が止め処無く溢れ、しとどに下着を濡らし、スウェットのズボンにさえ、染みを作り始めていた。
後穴は、開閉を繰り返し、ナカがきゅんっと疼き、火照る躰が口惜しくなった。
「な? 頼むっ! 助けてくれっ!」
「っ」
切なげな掠れた声。
眉を下げ、上目で見られ、一瞬怯んだ唯知が、唾液を飲み込んだ。
ドキリとしたのは、気のせいか。
真っ赤に腫れた兎の様な丸い眼に、心が揺らいだ。
「声も出さねぇーし、お前が目隠しして、女とヤってる妄想すりゃ良いからっ!」
視界を遮り、声を押し殺し、挿入してしまえば、女とヤっていると錯覚出来る。
唯知が、星来に触らなければ何とかなる。
そう思った星来が、提案した。
「んな事言われても無理」
が、然し、唯知はそれでも首を立てに振らず。
拒否し続けた。
「なぁ、マジで頼むっ! 指だけじゃ届かねぇーところが辛ぇーんだ。痒いし、疼くし。固くて太いモノでナカ擦られねぇーと気が狂いそうで……っ。人助けだと思って……」
「……お前な……処女だろーが? 大事にしろよ」
「処女って……俺、男だし。んなもん別に……」
こんな状態になっているのだ。
楽になれるなら、後穴の純血など守ろうとは思わない。
それに星来は今、彼女が居らず、居ない間の貞操観念は、ほぼ無い。
兎に角、今は何がなんでも楽になれれば、それで良かったのだ。
「それでも、無理だ」
「……分かった。じゃあ、もうアイツに頼むしかねぇ」
「っ」
アイツ≠ニは、家憲の事だ。
誰を指しているのか分かった唯知が、息を詰めた。
「お前、莫迦か。アイツはかなりのSじゃねぇーか。抱かせてみろ。何されるか……」
唯知も家憲とは友達で、彼の性癖を知っていた。
数ヶ月前だが『人に見られながら、エッチしてみたい』と言われ、興味もあった事から、家憲と女の性交を見たりもした。
尻を叩かれ、首を締められながら、恍惚の表情を浮かべ、失禁した女の姿は記憶に新しい。
正直言って、あの光景は異様で気味が悪かった。
あんな嗜虐趣味を持つ家憲に親友が……と考えると、それは避けてやりたい。
それに、家憲は嘗て。
「星来は感度がきっと良いぞ」と唯知に耳打ちしていた。
理由は、男の悪巫山戯で家憲が星来を擽った時、涙を流し、やけに身悶えたからだった。
そこから、味を占めた家憲は、星来の背中をスーっと指で撫でたり、耳に息を吹き掛けたり、服の上から乳首を押したりと、星来を揶揄い、その反応を楽しみ始めた。
家憲は、完全に星来をそういった対象として見ている。
その事に気付いていた唯知の背中に冷たい汗が流れた。
「だから、お前に頼んでんだろーが。お前なら後々、後腐れねぇーと思って……」
星来と唯知との間に色恋沙汰など無い。
気が置けない親友だからこそ、終わった後、莫迦だ……と笑い飛ばしてくれる。
助けてくれる。
そう思ったからこそ、星来は唯知を選んだのだ。
これで、懇願は最後。
そう決めた彼が顔を上げ、唯知の瞳をじっと見詰めた。
「…………」
然し、唯知は口を閉ざし、無言。
瞼は伏せられ、瞳は斜め下に逸らされていた。
「分かった。ごめんな。無理言ってよ……」
同性だもんな、そりゃ気持ち悪いよな。
そう付け足しながら、星来が立ち上がった。
意外にも、拒否られた事がショックだったのか、彼は泣きそうになっていた。
「……勃たせる事出来んのか?」
「……は?」
「勃起しねぇーと挿れられねぇーだろ」
「っ、唯知!!」
「言っとくが、これは貸しだからな」
「分かった。何か奢ってやるっ!」
唯知が折れた。
これで、この苦しみから解放される。
ホッとした星来の目が輝いた。
「女とヤってんの想像しろよ」
黒のアイマスクを使って、唯知の視界を遮り、ベッドに寝かせ、寛がせた肉棒を扱きながら、星来が言うと。
「分かった」
唯知が、素直に肯首した。
「お前は動かなくて良いからな。俺が上に乗って動くから」
「ああ」
つまりは、何もしなくて良いのだろう。
そもそも、いくら親友でも動く気など最初から無い。
これは、ただの人助けなのだから。
・