【短文】

□【お前のち●こを貸せ】
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「るせぇ、マジでもう無理だって言ってんだろっ!」


拒否され、星来がその場にへたり込む。
もう本当に限界だった。
服が擦れるだけで、ビクビクと躰が反応する。
肉棒の先っぽからは、我慢汁が止め処無く溢れ、しとどに下着を濡らし、スウェットのズボンにさえ、染みを作り始めていた。
後穴は、開閉を繰り返し、ナカがきゅんっと疼き、火照る躰が口惜しくなった。


「な? 頼むっ! 助けてくれっ!」

「っ」


切なげな掠れた声。
眉を下げ、上目で見られ、一瞬怯んだ唯知が、唾液を飲み込んだ。
ドキリとしたのは、気のせいか。
真っ赤に腫れた兎の様な丸い眼に、心が揺らいだ。


「声も出さねぇーし、お前が目隠しして、女とヤってる妄想すりゃ良いからっ!」


視界を遮り、声を押し殺し、挿入してしまえば、女とヤっていると錯覚出来る。
唯知が、星来に触らなければ何とかなる。
そう思った星来が、提案した。


「んな事言われても無理」


が、然し、唯知はそれでも首を立てに振らず。
拒否し続けた。


「なぁ、マジで頼むっ! 指だけじゃ届かねぇーところが辛ぇーんだ。痒いし、疼くし。固くて太いモノでナカ擦られねぇーと気が狂いそうで……っ。人助けだと思って……」

「……お前な……処女だろーが? 大事にしろよ」

「処女って……俺、男だし。んなもん別に……」


こんな状態になっているのだ。
楽になれるなら、後穴の純血など守ろうとは思わない。
それに星来は今、彼女が居らず、居ない間の貞操観念は、ほぼ無い。
兎に角、今は何がなんでも楽になれれば、それで良かったのだ。


「それでも、無理だ」

「……分かった。じゃあ、もうアイツに頼むしかねぇ」

「っ」


アイツ≠ニは、家憲の事だ。
誰を指しているのか分かった唯知が、息を詰めた。


「お前、莫迦か。アイツはかなりのSじゃねぇーか。抱かせてみろ。何されるか……」


唯知も家憲とは友達で、彼の性癖を知っていた。
数ヶ月前だが『人に見られながら、エッチしてみたい』と言われ、興味もあった事から、家憲と女の性交を見たりもした。
尻を叩かれ、首を締められながら、恍惚の表情を浮かべ、失禁した女の姿は記憶に新しい。
正直言って、あの光景は異様で気味が悪かった。
あんな嗜虐趣味を持つ家憲に親友が……と考えると、それは避けてやりたい。

それに、家憲は嘗て。
「星来は感度がきっと良いぞ」と唯知に耳打ちしていた。
理由は、男の悪巫山戯で家憲が星来を擽った時、涙を流し、やけに身悶えたからだった。
そこから、味を占めた家憲は、星来の背中をスーっと指で撫でたり、耳に息を吹き掛けたり、服の上から乳首を押したりと、星来を揶揄い、その反応を楽しみ始めた。

家憲は、完全に星来をそういった対象として見ている。
その事に気付いていた唯知の背中に冷たい汗が流れた。


「だから、お前に頼んでんだろーが。お前なら後々、後腐れねぇーと思って……」


星来と唯知との間に色恋沙汰など無い。
気が置けない親友だからこそ、終わった後、莫迦だ……と笑い飛ばしてくれる。
助けてくれる。
そう思ったからこそ、星来は唯知を選んだのだ。

これで、懇願は最後。
そう決めた彼が顔を上げ、唯知の瞳をじっと見詰めた。


「…………」


然し、唯知は口を閉ざし、無言。
瞼は伏せられ、瞳は斜め下に逸らされていた。


「分かった。ごめんな。無理言ってよ……」


同性だもんな、そりゃ気持ち悪いよな。
そう付け足しながら、星来が立ち上がった。
意外にも、拒否られた事がショックだったのか、彼は泣きそうになっていた。


「……勃たせる事出来んのか?」

「……は?」

「勃起しねぇーと挿れられねぇーだろ」

「っ、唯知!!」

「言っとくが、これは貸しだからな」

「分かった。何か奢ってやるっ!」


唯知が折れた。
これで、この苦しみから解放される。
ホッとした星来の目が輝いた。


「女とヤってんの想像しろよ」


黒のアイマスクを使って、唯知の視界を遮り、ベッドに寝かせ、寛がせた肉棒を扱きながら、星来が言うと。


「分かった」


唯知が、素直に肯首した。


「お前は動かなくて良いからな。俺が上に乗って動くから」

「ああ」


つまりは、何もしなくて良いのだろう。
そもそも、いくら親友でも動く気など最初から無い。
これは、ただの人助けなのだから。



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