【短文】

□【親友を揶揄ったら鳴かされた】
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「ああ。堪んねぇなその表情。ゾクゾクする」

「っ!」


頬を赤くし、瞳をギラ付かせ、心底愉しそうに口角を上げた爽詩。
親友はこんな表情と台詞を言う様な人間だっただろうか。
それほどまで悩んでいたと言うのか。
自業自得の結果だが、だからと言って状況を諦めるなど出来ない。
親友に掘られたくはない。
絶体絶命に、幸義は作った拳を振り上げた。


「ぐっ!」


ゴッ!と音が鳴った。
幸義が、爽詩の横っ面に拳を食らわせた音だった。
爽詩は一瞬だが、蹌踉めいた。
が、直ぐに体勢を立て直した。


「はーっ、はーっ、爽詩。今なら未だ引き返せるぞ」

「は、ははっ、馬鹿だな、お前」

「なっ!」


ぐるっと幸義の身が半回転させられ、床と御対面となった。
爽詩は殴られた頬を触った後、口の端の血を拭って、ぺろりと舐めた。


「俺には逆効果って分かんねぇーのか」

「っ」


そうだった。
爽詩に抵抗や怒声は逆効果だった。
幸義は絶句した。
そして、考えた。
どうすれば、親友が止まるか考えた。
出た答えは、一つだった。


「あー、うん。もういいよ、ヤっても」


抵抗せず、萎える事を言えば良い。
気を削ぐ事が出来れば、爽詩はヤる気を失う筈だ。
彼は、そう思い至り、体の力を抜いた。


「……痛くないようにな」

「そうだな。これでヤり易くなるな」

「……は?」


思った反応と違った。
あれ?と疑問に思っていると、スウェットのズボンの中に手が侵入した。


「ちょっ、え? んうッ!」


止まると思った行為が、逆に進んだ。
幸義は戸惑いを隠せなかった。
慌て、肉棒を撫でる手を後ろ手で掴んだ。


「爽詩、止めろって!」


下着ごしとは言え、肉棒を触る手つきが厭らし過ぎて、下腹部に熱が溜まる。
この儘では勃起し兼ねない。
爽詩の手を掴む、幸義の手に力が籠った。


「はあ? ちょっ、待っ、んッ!」


やはり、うつ伏せでは大した抵抗が出来ない。
爽詩はそれを良い事に、反対の手で幸義の乳首をこりこりと捏ね、耳朶を甘噛みした。


「マ、マジで、止めろって!」


幸義はパニックになった。
もうどうすれば良いのか分からなくなっていた。


「抵抗しない演技は一瞬だけか?」

「てか、何で止めないんだよっ」

「バレバレの演技されてもなあ?」

「っ」


開き直っての演技など爽詩にはお見通しだった。
最早、手立ては無かった。


「んくッ、ん、んうッ!」


全裸に剥かれてから二時間経った。
藻掻いても足掻いても無駄だった。
幸義の心は暗闇に突き落とされ、意識せずとも涙が溢れていた。


「くっ、うっ、んんッ!」

「…………」


びくんッびくんッと反応する体躯。
朱色に染まった耳と首。
手触りの良い肌。
声を押し殺し、両手で口を塞ぐ姿は官能的で。
眼前の男を酷く煽った。
この二時間、爽詩は幸義が何をしても止まらなかった。
幸義の体を堪能し続けていた。


「も……っ、しつこい!」


幸義は三回果てていた。
一回目は手で、二回目は口で、三回目は前立腺と口と手で。
体躯は脱力感に襲われていた。
もう何も出そうに無かった。
なのに、爽詩は余裕だった。
彼は一度も白い体液を出していなかった。
肉棒は勃っていたのに。
幸義の後孔にはローションにまみれた指が三本、ずっぽりと嵌まっていた。
そこからは、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が鳴っていた。
苛められ続けた前立腺は、ぷっくりと腫れ、主張を示していた。
乳首も乳輪も同様に真っ赤に腫れ、果物の様に熟れていた。


「あ、くっ、ふっ、ううッ!」


幸義は思った。
女性と別れていたのは、このしつこさも原因だろうと。
それ程まで、爽詩の愛撫は執拗過ぎた。
過ぎる快楽は、苦痛も伴う。
早く楽になりたいと願うのは、当然だろう。
幸義は、もう抵抗出来なくなっていた。
ぐったりした体躯は、されるが儘だった。
体力のある男でこれだ。
女性なら、気を失っていても不思議では無い。


「力抜けよ」

「っ」


ぱちんと鳴った音は、爽詩がコンドームを装着した音だった。
幸義は、爽詩により仰向けにさせられ、両の腿裏を持たれた。


「あ、ぐッ!」


指とは質量の違うモノが後孔を押し拡げる。
痛みと気持ち悪さに、幸義は背を反らせた。


「痛ッ、くうっ!」


体躯は逃げようとしていた。
それを爽詩が阻止し、腰を押し進めて行った。
幸義は肉壁を割り開く感覚に身も心も苦しくなった。


「あくッ、ああッ!」


全て埋まる前に始まった律動。
過敏になった前立腺を擦られたせいで、幸義は絶叫した。



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