【短文】

□【親友を揶揄ったら鳴かされた】
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「くっ!」


爽詩は肉壁の収縮に負け、ナカに熱い飛沫を放った。
こんな絶頂は彼自身初めてだった。
それほどまで強烈な、頭にズドンッとクる快感だった。


「ヤベェ、頭馬鹿んなる……」


眩暈混じりのふわふわした感覚に、爽詩は何も考えられなくなった。
彼は恍惚の表情を浮かべ、幸義の腰を掴みながら、腰をゆるゆると動かした。


「あッ、うっ、くっ、三回目とかッ、もう、やだっ、無理だって!」


爽詩はどれほど溜まっていたと言うのか。
三十五人目の彼女と別れてから二週間もの間、自分でヌいていなかったのか。
幸義は止まらぬ親友の暴走に、ただただ絶望した。
彼が出来る事は、鳴き続ける事だけだった。



* * *



「くうっ!」


幸義は自身のベッドで自慰をし、達した。
目の前には、親友の姿があった。


「次は自分でケツマンを拡張しろよ」

「嫌だ……」

「写真ばら撒いても?」

「なあ、爽詩。お前どうしちゃったんだよ。こんな奴じゃ無かっただろ?」


あれから幸義は爽詩に脅される様になった。
爽詩はあの後、自分と幸義との行為をハメ撮りした。
勿論、顔が写っているのは幸義だけ。
爽詩はそれを使って、三日後、幸義に自慰をするよう強要した。
幸義は激しく抵抗した。
犯されてから三日間、何事も無く、普段通りにしていただけに、寝耳に水だった。
終わった事だと思っていたのに。
三日間、あんな事無かったかの様に互いに過ごしていたのに。
正か、写真を撮られていたとは。
ばら蒔くと言われ、蒼白になった彼は一回だけだと、自室で自慰をした。
爽詩は、幸義がイクまでその光景をじっと見ていた。
イッた後、彼はまたしても幸義を激しく抱いた。
幸義は、最近爽詩に付いて行けなくなっていた。
疲労とストレスはピークに達していた。
爽詩は、普段は何時も通りだった。
欲が溜まり、エロい事をする時だけ人格が変わる。
それ以外は、元の親友そのもの。
だからこそ、なかなか離れられなかった。
が、もう限界だった。
この一ヶ月ずっと耐えて来たが、これ以上一緒に居たら互いに駄目になる。
彼はそう思い、離れる決心をした。


「これ以上、お前を嫌いになりたくない」

「お前、俺を嫌いになんのか?」

「こんな事されたら……強要されたら誰だって嫌いになるだろ」

「本当は好きなくせに」

「っ」


幸義は瞠目し、唇を震わせた。
何故バレているのか。
どこでバレたのか。
見当も付かず、頭の中が真っ白になった。


「バレてないと思ったのか?」

「……違う。俺は男だ。そんな事ある訳ない」


幸義の声が震える。
隠し通して来たのに。血の気が下がった。


「顔色悪いぞ」

「っ」


どうやら誤魔化せそうにない。
そう悟り、俯き項垂れた。


「何で気付いたんだ?」


幸義が爽詩の事を好きになったのは、高校二年の時だった。
彼は幼少の頃から、好きになるのは同性だった。
低学年の時、それが可笑しい事に気付いた彼は、恋愛の話をしなくなった。
異性愛の話を聞く余裕が出来たのは、高校に入ってからだった。
話しを合わせる事が出来る様になった彼は、友人の話しを苦もなく聞いていた。
幸い彼は、同性でも友人と認識すると友人として関わる事が出来るタイプだった。
だから、親友だと認識した爽詩の事を好きになるとは思ってもみなかった。
理屈では無い。気付いた時には惚れていた。
ルームシェアをしようと言われた時、彼はかなり渋った。
頻繁に爽詩と接して、気持ちがバレないかと心配になった。
しかし、結局は折れた。
ルームシェアは、存外悪くなかった。
互いにバイトをしている事と、爽詩が彼女の家に泊まる事が多かったからだ。
適度な距離感は、心地すらよかった。
幸義は、爽詩から彼女の話しをされても顔色一つ変えていない自信があった。
嫉妬は心の奥の奥の片隅に隠し通していた。
なのに、どういう事だろうか。
爽詩本人に勘付かれていた。
有り得無かった。


「お前、俺と一緒に住んでからオナるのは何時だった?」

「……は?」


質問を質問で返され、幸義はきょとんとなった。
しかも、質問内容が脈絡無さ過ぎる。


「俺が居ない時だろ?」

「まあ、それはそうだけど……」


爽詩が居る時に、自慰行為など出来る筈も無い。
何せ、爽詩をおかずにしている事が多いのだから。


「ずっと気になってたんだよな。お前、何時ヌいてんだって。相手も居ねぇ、エロDVDも持ってねぇ、観ようって誘っても断る。トイレや風呂でヌいてる様子もねぇ。じゃあ、何時何処でってなんだろ?」

「…………」


何か嫌な予感がする。
幸義は閉口し、拳を握り締めた。



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