【短文】

□【惚れた腫れたより質の悪いもの】
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「中学入って直ぐ入らなくなったから、三年か」

「もうそんな経つのか」


月日が流れるのは早い。
仁はしみじみ思いながら、スウェットの上下を用意して脱衣場に向かった。


「んじゃ、先入ってるから入って来いよ」

「ああ」


響は淡々と返事をした。顔が綻んでいたが、脱衣場に行った仁には見えていなかった。


「お、来たか、来た、っ、」


浴室の扉が開き、響が入って来た。
シャワーを頭からかぶり、身体を洗おうとしていた仁は振り向き、響の身体を見て固まった。


「どうした?」

「や、お前成長し過ぎ。腹筋割れてんじゃん」

「そりゃ筋トレしてるし、身長も伸びたし当たり前だろ」

「あーくそっ、男として負けた気分」


ハーフな事と若さもあるのか響の身体は魅入る程だった。
筋骨隆々とまでは行かないが、程好く筋肉が付いていた。
因みにだが、股間はタオルにより隠されていた。


「んー、仁だってなかなかだと思うぞ」

「まあ、俺もそこそこ鍛えてるしな」


仁は肘を曲げ、力を入れて力こぶを作り「な? 筋肉あるだろ?」と響に見せ付けた。


「だな、結構あるな」


響はそっと力こぶに触れ、押した。


「だろ?」


仁はにっと笑った。肯定され嬉しい様だった。


「四十でこんだけ筋肉質なら充分じゃねーか?」

「おいっ、四十じゃ無ぇーよ、未だ三十八だ」

「えー、そこ拘るとこ?」

「拘るに決まってんだろっ」


仁はぷりぷり怒った。怒りながら、タオルを使い身体を洗い始めた。


「ごめん、ごめん。お詫びに背中洗うからさ」

「お、サンキュー」


息子に背中を洗って貰えるのも三年振り。
仁は久々のコミュニケーションに機嫌を直し、バスチェアに座った。


「はー、気持ち良い〜」


ごしごしごしごし。
人にやってもらうと何故こんなにも気持ち良いのか。
仁がうっとりと目を細める。


「痒いところはあるか?」

「真ん中辺り」


聞かれ、掻いて欲しいところを仁がお願いする。
心地好さに、彼は微睡んだ。


「うへっ?! な、何?」


突然、響に腕を持ち上げられ脇まで洗われた。
仁はビクッとなり、目を開けた。


「仁」

「へ? あ、ちょっ、前はいいって」


響の手が胸元に伸びる。仁は慌て、背後を振り返った。


「っ、」


のだが、ちゅっと唇に何かが触れ、思考が停止した。


「仁。俺薬飲まされてたんだ。二時間ずっと我慢してたんだが、もう無理、限界だ」

「は? 薬?」

「性的に昂る薬だと思う。ずっと緊張してたから何とかなったけど、ホッとしたら……こんな事に」

「っ、」


仁の背中に押し当てられた肉棒。それは熱を持ち聳り立っていた。


「はー、はあー、仁、苦しい」

「っ、響、大丈夫か?」


息を乱し、肩に頭を預けた響を仁が心配し身体ごと振り向く。


「痛ッ!」


途端、響がバランスを崩し床に尻餅を付いた。


「ひ、響っ!」

「仁っ、苦しいっ!」


響が縋る様にして仁を抱き締める。
症状が一気に進んだのか、響の身体は震えていた。


「ごめん。ごめんな、響。俺のせいで」


こんな事になるなら、最初から見合いなどしなければ良かった。
仕事の繋がりだからと、気を遣わなければ良かった。
仁は己を責めた。
響の事を見合い中に話したのも失敗だったと後悔した。
そもそも最初から自分になぞ興味が無かったのだと気付くべきだったのに。
つくづく女性を見る目が無い。仁は目をぎゅと閉じた。


「仁のせいだって言うなら、助けてくれよ」

「…………分かった」


逡巡したが、響が苦しんでいるのは自分のせい。
仁は自分で撒いた種は自分で刈り取るべきだと覚悟を決めた。


「嫌なら言えよ」


仁が響の股間を隠しているタオルをそっと捲る。あまりの成長ぶりに一瞬戸惑ったが、手を伸ばし触れた。
勃起した肉棒が喜びにビクッと跳ねた。


「う、くっ! 仁っ、はあ、はあ、仁っ」


くちゅくちゅくちゅ。
上下に擦られる肉棒。我慢汁が溢れ出し、仁の手を汚す。


「あっ、ふっ、仁、気持ち悦いっ」


好きな人に触られるとこんなにも気持ち悦いのか。
響は感極まり、仁の両頬を掴んで口付けた。


「んむっ?! んッ!」


口内に入った熱く濡れた舌。仁は驚きに目を見開き、咄嗟に身を引き逃げた。


「はあっ、仁、逃げるなよ」

「響、キスは駄目だ」

「何で?」


響は首を傾げながら、仁の唇をぺろっと舐め、仁の胸を揉み親指で両乳首を押した。


「んくっ、」


甘い刺激につい声が漏れる。それでも仁は直ぐに、はっとなり頭を振った。


「響っ、駄目だって」


薬を抜く為の救う行為なら未だしも、手を出す行為は間違えている。
仁は父親らしく、響を諭した。


「何で? 俺も仁に触りてぇーし、キスもしたい」

「後で絶対ぇ後悔するからっ!」

「絶対しないって断言出来る」

「断言って……響、あのな、俺は男でお前の育ての親だぞ? 顔だってイケメンなら兎も角、モブ顔だしな」

「そんなの関係無い。それに仁は可愛い」

「うーん。ハーフのイケメンに言われてもなぁ」

「責任取るって言ったのは嘘なのか?」

「や、嘘じゃない。俺が言いたいのは俺が触って責任取るのは当然だとしても、一時の感情でお前が俺に触るのは止めた方が良いんじゃないかって話で」

「一時の感情じゃねーし」

「お前、今薬で頭馬鹿んなってるだけだから、な?」

「馬鹿になんかなってねぇ!」

「ひび……っ、んうッ!」


逃げる事も説得も叶わなかった。
仁が名前を呼ぼうとした所で、響に唇を奪われた。
間髪を入れず、響の舌が蹂躙するよう口内に入り込んだ。


「んっ、ふっ、うっ、」

「はあっ、仁、手が止まってる」


響が口を一瞬だけ放し、吐息を漏らし指摘すれば、仁の手の動きが活発になった。
響は一生懸命な仁に口角を上げた。


「もしかして仁、こういう事久しぶりなのか?」

「悪かったな」


妻の出産間近にお迎え棒はしたが、それっきり。
響を引き取ってからは、そういった店すら仁は行かなかった。
故に、性的な行為は十五年振りだった。
仁は恥ずかしそうに顔を背け、俯いた。


「ヤベェ、ぶち犯してぇ」


堪らない動作に、響の理性がぷつんと切れた。
仁の身を引き寄せ、肉棒を合わせ扱いた。


「へっ、んあっ!」


半勃ちだった仁の肉棒が直ぐにむくむくと動き、完勃ちになった。
所謂、兜合わせに仁の背が反った。


「んっ、ひ、びきッ、」

「はー、はあー、仁っ、仁っ」

「むっ、んうっ」


何処からともなく唇を重ね、貪る様なキスを交わす。
二人の唇から飲み込め無かった唾液がつーっと流れ出た。


「んくっ、ふっ、んっ!」


十五年振りの快楽に仁の思考が霧散する。
駄目だ駄目だと思っているのに。
身体の力が抜け、仁はされるが儘となった。


「あくっ、もっ、駄目だっ、イクイクッ!」


響より早く仁が達しそうになる。
脚ががくがくと震え、頭の中が真っ白に染まった。


「ああ──っ!」


がくんっ!
仁の身が大袈裟なほど跳ねた。瞬間、白濁が尿道を通り、びゅるるっと外へ飛び出した。



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