novel
□third
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【ラゴニーとディーン】
AM5:30にセットした音楽が部屋に流れ出す。
「んー…相変わらず可愛い声ねぇ、アタシ」
自分の歌声に聞き惚れながら体を起こすオカマもとい紫ノ宮ラゴニー勇輝である。
ひと伸びして音楽を止める。
今日のお肌のハリは、と壁に取り付けてある鏡で自分の顔を見ながらスマイル☆
実に気持ち悪い絵図です、はい。
ベッドの横に3つも置かれた巨大なクローゼットの一番右の両開き扉を開ける。
そこには女物のドレスやトップスなどが溢れんばかりにあって。
「うーん、悩むわぁ…今日の予定ゎ対したことないのよねぇ」
誰も聞いてないのに一人でに話し出す悲しいオカマ。
「うふ♡やっぱりコレかしら?」
結局すべてのクローゼットを開け、取り出したのは黒色のチノパンと桃色の肩出しトップス。ハンガーにそれらを掛け、寝室を後にした。
「今日の朝食ゎ〜♪」
いきなり歌い出す上機嫌なラゴニーは、
裸体だった。
くるっと回って鼻歌交じりに台所の近くにかかっていたエプロンを手にする。
この後は、まあ、だいたい想像できるだろう。
(想像したくは無いが)いわゆる"裸エプロン"である。
「そうねぇ…パニーニでも作ろうかしら♪」
パニーニとは、イタリア風のサンドイッチのことである。
ラゴニーが昔にイタリアの知人から教えてもらった料理の一つだ。
具を挟んでから焼いて、パンにこんがりと焼き目をつける簡単な料理。
イタリア人の朝食は通常カプチーノだけなどと軽く済ますらしい。
「あ、多めに作って新人ちゃんに差し入れしよぉ」
ラゴニーは主婦のように家事全般の手際が物凄くいい。
…裸エプロンだということを除けば、家政婦も余裕だろうが。
「あらやだ、忘れてたわ」
朝食を食べ終えたラゴニーは選んであった服に着替え、メイクに取りかかろうとしていた。
最後にもう一度鏡を見てスマイル☆
立ち上がり、寝室のタンスからラゴニーが何かを取り出した。
「…何があるか、わからねぇからな」
今までの陽気なラゴニーの姿はもうどこにもなくて。
小さく舌打ちをした。苛立ちが部屋を満たす。
「さて、新人ちゃんゎまだ生きてるかしらぁ?」
手に持っていた物をそのままチノパンのポケットの中へ荒々しく突っ込んだ。