novel
□ninth
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「ここは…どこ、だ?」
何も見えない、暗く、孤独な空間。
底も奥行きさえもわからない。
なんだ、何が起こっているんだ?
誰に問うわけでもなく、呟く声が何処までも響いて行く。
『……だろ、…』
ふと、微かに聞こえた。
聞き覚えがある懐かしい声が。
「まさか…ウェイン……?」
そんなはずはないと言い聞かせ、眉を寄せる。
もう聞くことのないはずの声。
『もう、十分だろう…っ』
あぁ、知ってる。
これはあの時のウェインの言葉。
自然と震える身体に目を伏せた。
「ウェイン……すまない」
口から零れ出たその言葉は誰に届くこともなく、暗闇に静かに消えて行った。
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「…っ」
頬を伝うしずくに目を覚ます。
セットした目覚ましの時間より1時間近く早かった。
先日要に壊された目覚まし時計は使い物にならなくなったから、新しくした。
今度のは定番の音だが。
「…ウェイン……ブルックス」
かつて日々を共にした男たち、いわゆる共犯者の名前である。
頭を抱えて涙を拭った。
目が冴えてしまったラゴニーは、そうっと布団から出る。
奥にあるメンズ専用のクローゼットを開け、シンプルでカジュアルな服を取り出す。
「なんで…あの時の夢なんて…」
いつもの倍以上に遅い動きにため息と独り言が増える。
パチリと部屋の灯りをつけ、ワイパックスを探す。
見つけたそれを水で飲んでひと息。
「俺のタイムリミットは、あとどのくらいだろう…」
そう呟いて、保留荘を後にした。