恋の風吹く鬼狩り伝

□極秘任務
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任務先の鬼をあっさりと撃破した彩花は
鬼殺隊当主、産屋敷耀哉から緊急の呼び
出しを受け全速力で産屋敷邸に向かう。
屋敷の縁側には既に耀哉が座っており、
彩花は敬意を持って片膝を付いた。

1「遅ればせながら、日ノ輪彩花…只今
馳せ参じました」

耀哉「来てくれて有り難う、彩花。
疲れている所、すまないね」

1「とんでもない事で御座います。
……御館様に於かれましても、御壮健で
何よりで御座います」

耀哉「有り難う。
さて、任務を終えたばかりで大変申し訳
ないのだが…
彩花には至急、那田蜘蛛山へと向かって
貰いたい」

1「私は構いませんが、一体何が…?」

耀哉「十名程の隊士達が向かったのだが
連絡が途絶えてしまってね。
伝達に依れば十二鬼月の可能性が高く、
しのぶが向かってくれている。
…炭治郎の事は知っているね?」

1「はい、名前だけなら。
弟弟子の我妻善逸と行動を共にしている
癸の隊士ですね」

耀哉「彩花には、全てを知った上で協力
して貰いたい。
その炭治郎だが共連れの妹が居て、名を
『禰豆子』というのだが…
災難があって鬼になってしまったのだ」

1「鬼に、ですか?
何故、鬼殺隊士でありながら鬼を…?」

耀哉「鬼となってはしまったが、大した
精神力でね…あの子は人を喰らわない。
鬼でありながら炭治郎と共に鬼と戦って
いる異端の子だ。
…私は、あの兄妹に一縷の望みを掛けて
いるんだ。
鬼舞辻を討つ標になるのでは、と。
気休めとは言え、左近次が娘に人を守り
鬼と戦うよう暗示も掛けていると聞いて
いる。
私は彼等を容認し、娘の存在を公にせず
我が子として扱って来た。
……して…最初の話に戻るのだが、その
那田蜘蛛山に今彼等も向かわせている」

1「……詰まり、私が彼等に加勢すれば
良いのですね」

耀哉「我が子は物分かりが良過ぎて少し
困るね。
本来なら事情を知っている義勇も一緒に
向かわせたかったのだが、別件で到着が
遅れそうなんだ。
もし、他の子等が彼等と鉢合わせた際は
どうにか引き離して保護して欲しい」

1「承知致しました。
御館様、一つ質問を宜しいでしょうか」

耀哉「良いよ、何かな」

1「……何故、今回の件に私を御選びに
なられたのですか?」

耀哉「単純な理由だよ、彩花なら彼等を
すぐに認めてくれると思ったんだ。
鬼殺隊の子供達は鬼に対して強い恨みを
持つ子が殆どで、例え一度も人を喰って
いないとは言え『鬼を守って欲しい』と
頼むのは酷な話だからね」

1「勿体無い御言葉ですが少々買い被り
過ぎに思います。
私は御館様が御思いになる程、優しくは
御座いません。
…では早急に那田蜘蛛山へ向かいます、
御答え下さり有り難う御座います」

耀哉「宜しく頼むよ」

彩花が踵を返して走り去った後、耀哉は
夜空に浮かぶ満月を見上げながらフッと
顔を綻ばせる。

耀哉「……買い被ってなんかいないよ。
親馬鹿かも知れないけれどね、彩花には
人の才を見抜き伸ばす力があると思って
いるんだ。
その素直で優しい心に救われ、もう一度
前を向けた者は多いだろう。
そして彩花が心折れそうになった時は、
彼等が守り支えてくれると私は確信して
いるんだ。
君も、そう思うだろう? ねえ、陽介」
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