黄昏の鎮魂歌

□男と女
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彩花と共に先生の御隣へ住み始めて既に
1週間近く経過している。
先生の部屋に行き身の回りの事を記して
いるが、依然として先生の強さの秘訣を
掴めずに居る。
矢張り『S級10位以内』という課題を
クリアしなければ、次の段階に進む事は
出来ないようだ。
17位から10位以内、分厚い壁だ。
しかし俺の目的の為にも、此処で諦める
訳にはいかない…!

1「ジェノス」

ジェ「…!! 何だ?」

1「…いや、思い詰めたような顔をして
いたから何かあったのかと思ってね。
嗚呼…それと御風呂、空いたよ」

振り向いた先には白いタンクトップに、
黒いホットパンツで頭にタオルを被った
彩花が髪を拭きながら立っていた。
薄着な身体から立ち上る湯気と噴き出て
いる汗、そして銀色に光る濡れた髪。
湯気と共に石鹸特有の仄かな香りが鼻を
掠める。

ビビッ

ジェ「…?」

1「……どうしたんだい?」

ジェ「いや、何でもない」

一瞬コアに静電気のような微量の電撃を
感じた気がしたが、気の所為だったか?

1「博士に連絡しようか?」

ジェ「問題無い、風呂に入って来る」

1「分かった、異常あったら博士に連絡
するんだよ?」

その言葉に軽く返事を返し、俺は手早く
シャワーを済ませ脱衣所で機械の身体に
纏わり付く水分を拭き取る。
頭にタオルを被せたその時、先程と同じ
仄かな柔らかい石鹸の匂いが広がった。

ジェ「(嗚呼、彩花と同じ匂いが…)

そこまで考えた直後、ハッと我に帰る。
俺は一体、何を…!?
同じ物を使っているのだから同じ匂いが
するのは当たり前だ。
それに彩花は男勝りな点が目立つが正真
正銘の女なのだから、甘さを含んだ物を
使用するのも当然で…Σ女っ!!?

ガタッ!

動揺のあまりバランスを崩し、壁に手を
突いた。
俺は、女と暮らしている…!?
いや待て、女といえど彩花は俺の友人。
そうだ、あいつだって俺を男と意識して
いる訳ではない。
現に先程も、堂々と薄着で…
先程見た、薄着な彩花の姿がフラッシュ
バックする。

ボンッ!!

直後、目の前に浮かび上がる無数の赤い
『ERROR』の文字。
そして、けたたましい警告音と共に搭載
された様々な数値が振り切れてショート
した頭が轟音と共に小爆発を起こした。
数秒後には血相を変えた彩花が中へ飛び
込んで来るのも当然であった。
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