黄昏の鎮魂歌

□復讐の業火
1ページ/2ページ

もう二度と訪れないと思っていた意識の
浮上、しかし最初に目にしたのは揺れる
枝葉ではなく金属で出来た天井だった。

1「(此処は何処だろう……それ以前に
僕は一体、どうなったんだろう?)


疑問に思う事は山程あったが、ゆっくり
上体を起こすと腕が痛む。
ギプスと布で固定された右腕は明らかに
折れており、左足首には包帯が巻かれて
いて捻挫しているようだ。
装着していた立体機動装置も無く、服は
そのままでベッド脇にブーツがあった。

?「目が覚めたんじゃのう、娘さん」

1「…!?」

不意に掛かった老人の声、視線を向けた
先には白衣姿で茸のような髪型の老爺。

ク「驚かせたか? すまんのう。
儂は『クセーノ』という者じゃ」

1「僕を助けたのは、貴方ですか?」

ク「いいや、儂は治療しただけじゃよ。
御主を運んで来たのは、そこに居る白い
馬じゃ」

1「え…?」

先程まで気が付かなかったが、ベッドの
隣には愛馬のフローラが立っていた。
クセーノの話に依るとフローラは彩花を
背に乗せて歩き、頭で戸を必死に叩いて
いたらしい。

ク「自身も怪我をしておるというのに、
立派な子じゃよ」

1「怪我…!?(汗」

ク「左後ろ足の骨に罅が入っとる。
折れとらんから安心しなさい、数ヶ月間
安静にしておれば完治して走れるように
なるじゃろう」

1「……はあ、良かった…」

?「博士」

1「…?」

ク「おお、ジェノスか。
御帰り、破損はしとらんようじゃのう」

ジェ「はい、後で念の為メンテナンスを
御願いします。
所で博士、この女は何ですか?」

ク「こら、ジェノス。
女の子に向かって、そんな言い方しちゃ
いかんじゃろ?」

1「息子さんですか? 随分と変わった
人ですね。
あと威嚇しないでね、フローラ」

ジェ「それは貴様の馬か?
躾がなっていないな」

1「怒ってるのは君の所為だよ(汗」

ク「……そういえば、まだ御主の名前を
訊いとらんかったのう」

1「失礼しました。
僕は調査兵団所属、彩花・フリューゲル
18歳です」

ク「調査兵団?
はて、聞いた事が無いのう」

1「付かぬ事を御聞きしますが、巨人を
見た事はありますか?」

ク「それは怪人の事かのう?」

1「……多分、違うと思います。
取り敢えず、完治するまでの数ヶ月間は
御厄介になります。
…所で、僕が付けていた立体機動装置は
何処にあるんですか?」

ク「嗚呼、あの機械の事じゃな?
儂が預かっとるから心配せんで良え」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ