黄昏の鎮魂歌

□怪人退治
1ページ/1ページ

午後12時を少し過ぎた頃、S市の高層
ビルが破壊された。
ガラスの破片や火の粉が降り注ぎ、黒い
爆煙が立ち上る。
街の大通りには、尻尾で周辺の物を薙ぎ
倒しながら進む巨大な白蛇。

恨「妾は、男に裏切られた女共の怨念が
集まり生まれた恨み蛇!
裏切る男も略奪する女も要らぬ!
全てを物言わぬ石に変えてやるわ!!」

街を壊し、見境無く市民達を襲う。
炯々たる赤い双眸と目が合えば、逸らす
間も無く身体が石化する。
このままでは数時間足らずでS市が石像
だらけの、気味の悪いゴーストタウンと
化してしまうだろう。

恨「フハハハハ、妾を止められる者など
誰も居らぬ!!
他の街も殲滅し、妾の城を築くのだ!」

1「そうはさせないよ」

恨「何だ、まだ妾に歯向かう不届き者が
居ったのか?」

1「僕が相手になってあげるよ」

恨「フン、貴様のような非力な小童など
一飲みで食らってくれるわ!」

大口を開けて迫って来る恨み蛇、それを
躱し跳び上がった彩花はブレードを抜き
相手の項を削ぎ落とす。
しかし削いだ箇所は綺麗に再生し、また
襲って来た。
彩花は攻撃を回避ながら必死に考える。

1「(弱点は身体じゃないのか…?
それにしても石化する目は厄介だなぁ、
まるでメデューサだ……メデューサ?
…!! そうか!)


策を思い付いた彩花はガスを吹かして、
避難中の市民から恨み蛇を遠ざけながら
ある物を探した。

1「(S市は比較的、栄えてるから必ず
ある筈だ…!)


ガスの残量が半分を切った時、目当ての
物を見つけた。
それは、外装が全て鏡張りになっている
ミラービル。
恨み蛇を十分に引き付けた直後、素早く
屋上にアンカーを刺して真上に飛んだ。
彩花が目の前から居なくなった事で鏡に
映った自身の炯々たる赤い双眸の眼光を
見てしまった恨み蛇は、石像となり崩壊
した。
市民達の石化は解かれて、彩花は指笛で
呼んだフローラに跨り去って行った。
煌めく白銀の髪を靡かせ、白馬に乗って
颯爽と地を駆ける雄々しい姿から人々は
彼女を『白鷹の貴公子』と呼んだ。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ