狂おしく踊る悪の華

□終わりと始まり
1ページ/1ページ

私の父はヴィランで、無個性だった。
優秀な頭脳を駆使して悪徳政治家などの
家ばかり狙う泥棒で現代の鼠小僧として
知られていた。
殺生は好まない性格だった為、『殺しを
する時は大切な人を守る時』と私に常々
言い聞かせていた。
母はサポート会社に勤めるデザイナーで
私の個性は完全に母譲り。
二人は立場無く、互いの人柄に惹かれて
結ばれた。
仕事や社会的立場が変わっていても私達
家族は、三人で仲良く暮らしていた。
しかし私が中学へ進学する直前の冬に、
事件は起こった。
私の私立中学合格祝いで、ショッピング
センターに行った時の事。
突然ヴィランが暴れ出して、建物が一部
崩れた。
その際に父が瓦礫の下敷きになり、母が
慌てて駆け寄る。
私も助けに行こうとしたが滅多に大声を
出さない母が『来ちゃ駄目!』と叫んだ
事で動きが止まってしまった。
すると現場に居合わせた通行人が、父を
指差し『あいつ、ヴィランじゃね?』と
呟いたのだ。
その言葉一つで救助活動に当たっていた
ヒーロー達は、一斉に父と母を見た。
一方で周囲の反応に構う余裕など微塵も
無い母は、懸命に父親を引っ張る。
気付いて貰えた事で私は父親が助かると
思っていた。
しかし、彼女を手助けしようとする者は
一人も居なかった。
誰も二人を見ようとしない、助けようと
しない。
そして私が混乱している間に屋根が崩れ
落ち、二人は生き埋めになって死んだ。
助けられたかも知れないのに、見て見ぬ
振りをして見殺しにしたヒーロー達。
私は瞬時に悟った、『ヒーローは善良な
人間しか助けてくれないのだ』と。
私は誓った、『両親を殺した全てに復讐
しよう』と ───
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ