《古高俊太郎》
□ short.1【色彩】
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ぬばたまの夜
無数に煌めく光の中に
仄 赤 く
浮かぶ月は
眩むほどの光を湛え
その光を、惜しみなく地上へ降り注いでいく
光は
島原の、座敷一室の窓から優しく差し込み
男の顔を縁取り照らした
そして
光から生まれた影は
女の涙を隠した
―鐘の音が時を報せる
男は、二言、三言、女と言葉を交わす
女は頷き、漆黒の睫を伏せ、若草色の座敷の扉を後にした。
深紅の着物を着た其の女は、月影に照らされながら夜道を歩く。
はらり。
はらはらと
澄んだ透明な水が
幾粒も女の頬を伝った。
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