テニスの王子様《短編》
□赤鬼
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「出て行きましたよ?
おっかけねーんスか?」
ま、追いかけたら即座に俺が捕まえるけどね。
あんなオトコのとこに、行かせるわけないっつーの。
「…………」
紗羅先輩は、いつまでも黙っている。
「何さっきから黙ってんスか……。
もしかして、今のヤツのこと好きなんスか?」
俺、手が震えてる。
きっと、怒りのせいだけじゃない。
紗羅がどう答えるのか、緊張してんだよな。
「俺が邪魔しなきゃ、告白受け入れてたの?
ねぇ、紗羅先輩?」
何で、さっきから泣きそうな顔で黙ってんだよ。
俺が、まるで悪者みたいじゃんか。
「……はぁ……」
俺は溜息をついて、倉庫を漁った。
テープとスプレーはすぐに見つかった。
「んじゃ、俺行くんで
お邪魔しました」
さっきの野郎潰してやりてぇけど、邪魔なのは俺の方だったらしい。
あー、あっちぃ。
倉庫の中ムワムワしてて、なんかクラクラする。
シャツに汗がへばりついてて、なんかイライラもするし……。
……はやくこっから出ようと、倉庫から出た時。