テニスの王子様《短編》
□赤鬼
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「……今、なんて言ったんスか?」
もう一度……。
もう一度、聞かせて欲しい。
「……っ!
あたし、赤也くんの事が好きなの……
だから……告白も、断るつもり……」
顔を真っ赤にした紗羅先輩が、俯きながらボソボソと言う。
副部長から俺を庇った時や、俺を叱る凛とした表情も声もなくて……。
凛とした紗羅先輩に惚れたはずなのに……。
それでも、顔を真っ赤にして、俺を上目遣いで見てくる紗羅先輩は、すげぇ可愛い。
「……さっきの告白、ムカついてムカついて滅茶苦茶にしてやりたかったんて、ぶっ潰しましたけど……?
紗羅先輩が、告白されてるとこ見ただけで、俺狂いそうなんですけど?」
壁に押し付けた紗羅先輩を、優しく抱きしめた。
柔らけぇ……。
めっちゃいい匂いすんじゃん。
「俺は紗羅先輩が好きっスよ」
「……ほん……とう?」
ーー抱きしめてるから、顔見えないけど、たぶん泣いてんだな。
声が震えている。
「何で嘘つかなきゃならねーんスか……
アンタこそ、逃げんなら今のうちだけど?
嫉妬深いガキみたいな俺っスよ?」
まー逃がさないんだけどね。
何回でも追いかけて、何回でも捕まえてやる。
……ったく、嫉妬深い赤鬼に捕まっちゃうなんて、大変っスね。
「赤也……くん……
好き……」
あーあ。
もう絶対、逃がしてやんねぇからな?
-end-