テニスの王子様《短編》
□ビターなチョコレートケーキ
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「跡部って、甘いモノ苦手なの?」
2月14日。
バレンタインデーの日。
忍足の彼女の紗羅が聞いてきた。
「アーン?別に苦手ってわけじゃねぇよ」
「ふーん?
……ならなんで、そんなにしかめっ面な顔してるの?」
紗羅はめざとい。
人の小さな言動や行動で、その人の本心を見抜いてしまう。
俺様の眼力より凄いんじゃねぇか?とたまに思ってしまうほどにズバ抜けているのは確かだ。
「こんなに貰っても食べ切れねぇだろ」
ある意味本当で、ある意味嘘の説明。
何百個とあるチョコレート。
色彩鮮やかに、美しくラッピングされたチョコレートの中に、俺様の本命からのチョコレートがなかっただけの話だ。
貰えるはずもねぇってのは、分かっていたがな……。
忍足の彼女になっちまった紗羅から貰えるなんて、ありえるわけもねぇ。
紗羅を好きだと気がついたのは、紗羅が既に忍足と付き合い始めた後だった。
人のモノを盗るなんて、そんな汚いマネはしない。
例え女々しく1人の女を思っていようが、そこは譲れない。
跡部景吾としてのプライドが許さない。