テニスの王子様《短編》
□こっちを向いてよ
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ーー僕を見て
もう、何回心の中でそう願ったか分からない。
かなり前から気がついていたよ。
テニスコートを一心に見つめるとある少女の存在には。
最初は、何とも思ってなかった。
数多くいる、テニス部レギュラーのファンか何かかと思っていた。
『………あ、あの……っ!』
それはある日の事。
部活が終わり着替えを済ませ、帰ろうとした時だった。
『僕に何か用かな………?』
突然話しかけてきた相手は、毎日テニスコートを見つめている少女だった。
こんなに近くで見るのは初めてだけれど、とても可愛らしいと思ったのを今でも覚えている。
『あ……の………
リ、リョーマ君……って……
まだ、着替えてます……か?』
『越前……?
……クス、越前の事が気になるの?』
『そ……そんなつもりじゃ……!』
ーー顔を真っ赤にしながら慌てて否定されてもね。
説得力なんて微塵もないよ?
『……クス』
きっとこのコ、越前の事が好きなんだろう。
だって毎日コートを見つめる瞳が、恋している瞳だったから。