テニスの王子様《短編》
□赤鬼
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大抵、副部長に会うとロクな目にあわないんだよなぁ……。
よっし、ここは三十六計逃げるがなんたら!!
猛スピードで、副部長の横を駆け抜けようとしたその時。
「あれ、赤也くん?」
「うぉあ……っ!……っぶねぇ……!」
急に声をかけられてビックリしたせいか、バランスを崩して転びそうになる。
い、今の声!
この凛としたハッキリした声は!
「紗羅先輩じゃないスか!」
一つ年上で、副部長と同じクラスの紗羅先輩。
前日、何の委員会も入ってないのに、部活に2時間も遅れた俺に、廊下でビンタしようとした副部長。
そんな副部長の前に立ちふさがって、俺を庇おうとしたのが紗羅先輩
なんて言うカッコ悪い出会いをしちまったんだよなー……。
あー黒歴史。
でも、それがなきゃ紗羅先輩とは出会えてないし……。
この時ばっかは、副部長のビンタに感謝っスよ。
俺を庇おうと、真田副部長の前に凛とした眼差しで立ち塞がった紗羅先輩の横顔に……。
俺は不覚にも惚れてしまった。