読み物

□ホンモノ
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恐がる者、平気そうな者など反応は様々。だが、誰一人「そんな話は嘘だ」と言う者はいない。そんな表情もしていない。
何故なら、彼女たちは鳴介が本物の霊能力者であることを知っている。

「少しは涼しくなったかしら。」
「えぇ、少しひやっとしましたわ。ありがとうございます。」


「土井先生。」


上級生になるほど人数が減る忍術学園。特に元から人数が少ないうえ、三年生までの行儀見習いで辞めてしまう者が多くさらに人数が少ないくのたま上級生。
つまり、くのたまで上級生になるということはそれだけ優秀だと言うこと。
彼女たちの中に、見破るものが混じっていた。

「…おや、完璧だったはずなのに。メタモン、もういいよ。」
「もんもーん」

ぐにゃりと変化し、現れたのは半助とメタモン。
外見はメタモンを自分に纏わりつかせて、声は向こうから持ってきたボイスチェンジャーを使って変装していた。
言っておくが、どんなメタモンでもこんな芸当が出来るわけではない。保護区に住んでいる中でも、特に抑止力に手を貸すことが多いこのメタモンの変身能力がずば抜けているだけだ。ちなみに、忍術学園ポケモン世界合宿時に、鉢屋三郎と割と仲良くなったメタモンとこの子は同一個体である。

「…むしろその変装の仕方の方が怖いですよ。」
「そういうことを言わないで欲しいな。メタモン、付き合わせてすまなかったね。君が遊びたいと言っていた鉢屋はもう授業終わっているよ。遊んでおいで。」
「も〜ん♪」
「で?変装までして何がしたかったんです?」
「怖い話がしたかったんだよ。…この中の数名にね。」

ギラリと変わる彼の目。冷たいきつい視線。

「一応言っておくが、さっきの話は実話だよ。私の実体験。」
「それがなにか。」
「ありえないとは言わないんだと思ってねぇ。」

ぎくりと肩を震わせた者が何人かいた。それを見逃す彼ではない。

「私の親友である鳴介の力は信じるくせに、そうじゃないものは信じないというのもおかしい話じゃないか。いるんだろう?ここの下級生に。」
「…なんのことでしょうか。」
「とぼけるな。」

恐怖すら感じる低く強い声で、半助は咎めた。

「鳴介と同じように視え、話せ、関われるものがここにもいる。なのにその子に対して随分な仕打ちをしたらしいねぇ。…私が許すと思っているのか。」
「こ、怖いもの怖いと言って何が悪いんですか!」
「そうです!それに、何故お咎めをするのがシナ先生や学園長先生じゃないんですか!どうして土井先生があんな子の肩を…」
「鵺野鳴介の親友に向かってそんな口を叩くのかお前たちは。」

ひぃっ!と小さな叫びがそこかしこから聞こえてくるほどの威圧感。

「私は視え、話せ、関われる力を持ったアイツの親友だ。アイツが幼少時にどんな酷い仕打ちを受けて来たか知っている。出来ることなら、もっと幼いころからアイツの傍に居てやりたかった。そうすれば、アイツを傷付ける者などいなかったはずなのに。」

血が出そうなほど拳を握りしめる半助。そう、彼は悔しかったのだ。
親友となった男を、もっと早くから守りたかった。

「誰が好き好んであんな力を欲すると思う。視えず、話せず、関わることもないからお前たちは好き勝手にそう言えるんだ。分からないから分かろうとしない。強い霊能力を持った人間の苦しみを、お前たちは何も分かろうとしない!」

どんどんと声が荒くなる。感情的になり過ぎるのは忍者としてはよろしくないが、それでも彼は抑えられなかった。

「だったら、嫌でも分かればいい。彼らが見ている光景を君たちも経験すればいい。」
「…え?」
「それなら、きっとそんなこと言えなくなるから。」

そう言った半助の手には、鳴介が愛用している水晶玉が乗せられていた。

「さぁ、反省の時間だ。」

期限?そんなもの設定しないよ。
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