読み物

□ホンモノ
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「どんな気分だ。」
「土井…先生…」
「お前が貶し苦しめ続けていた人間の見ている景色だ。人は視えないものを理解しようとしない。分からないものは勝手に悪と決めつける。そんな権利、あるはずもないのに。」
「助けて…ください…」
「言ったろう?反省の時間だと。君からは反省なんて微塵も感じない。ただ怖いことが嫌で、取りあえず謝っておけばどうにかなるだろうと言う浅はかな考えだ。それを反省と呼ぶのか?」
「ごめんなさい、本当にごめんなさい!」
「死ぬことはないさ。もうしばらく反省しているんだね。」

彼女がそこから解放されたのは、翌日のことであった。



「何が私利私欲で使ってないだ。思いっきりお前の感情そのままじゃないか。」
「方々の許可はあるんだから私利私欲じゃない。」
「正論だから余計腹立つわーコイツ………オレは死なないよ。」
「人間いつかは死ぬだろ。」
「違う。人を恨みながら自殺しないってことだよ。」

メリーさんの一件を話したのは間違いだったかもしれないと思うと同時に、そこまで自分を思ってくれている親友に少しだけ嬉しくなったのは秘密だ。

「最後までオレを信じてくれる、泣き虫で甘え下手な親友がいるからな。」
「おいこら誰が泣き虫で不器用だ。」
「お前以外に誰がいるんだっての。」

泣き虫と言っても、半助が泣くのは兄・スネークの前か鳴介の前でだけ。
甘え下手な彼が、分かりやすく甘えるのもスネークの前でだけ。そして、鳴介に対しては愚痴も弱音も吐いてくれる。
急速に大人になることを求められる世界に生きてきたために、泣くことを甘えることを抑え、弱音も愚痴も飲み込んできた。
そんな半助が、自分に対してだけは遠慮なく感情を露わにし、年齢相応かそれ以下の対応をしてくれるのは友として嬉しかった。
力によって仲間を得られなかった鳴介にとって、ここまで対等に付き合える友は後にも先にも半助だけであった。

「お前の気持ちは嬉しいよ。けど、さすがにやり過ぎだ。解除に行く。」
「……」
「不服だろうけど、恐怖ってのは容易に人の精神を破壊する。長時間続けるのは危険だ。」
「………」
「…はぁ。分かったよ、ペナルティだしな。最悪日をまたいだくらいに解除しとく。危険と判断したらその時。」
「…やっぱりお前は甘いんだよお人好し馬鹿。」

けど、そんな彼だから親友になったのだと、半助は分かっている。



「で、視える場合の制御方法は…」

ペナルティを科したくのたま数名は、また同じことをすれば視えるようにすると言うおど…教育を施したため、ちゃんと反省モードに入っていると言う。
現在、鳴介は力を制御出来ないくのたまに個人的に指導を入れているとのことだ。

「本当に、お優しい人ですね。」
「…えぇ、本当に。」

本当は、その自己犠牲をやめてくれと、そんなに優しくなくていいんだと言いたかった。
けれど、結局はそれが鳴介の魅力であり人柄だから、何も言えない。そんな彼が好きだから親友でいるのだから。





「…さて。」

指導も一通り終わった。半助たちは仕事に戻った。
ここにいるのは鳴介だけ。

「南無大慈大悲救苦救難…」

−やめろ…−

「広大霊感観世音菩薩…」

−ヤメロ…−

「摩訶薩 南無仏 南無法 南無僧…」

−ヤメロォォォォォ!!−

「まったく、時代は変われど本質は変わらないな。アイツに協力した霊はいいにしても、こういうのは放っておくのが危険だからな。強制的に成仏させておく方が良い。」

ジャリ、と持ち直した数珠が鳴る。

「それにしても…」































「忍者の学校なだけあって、恨み買ってるなぁ。」
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