特別部屋

□要注意人物・伊達政宗
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要注意人物・伊達政宗


「……小十郎。」
「なんでございましょうか、政宗様。」
「お前、オレが穏健派に移るって言ったら止めるか?」
「…いえ、それが政宗様のご意志ならば。」
「…そうか。」

慶次が帰った後、政宗は悩みに悩み、穏健派に移ることを決めた。その旨を書いた文を前田家に送り、そして思い出す。

(大っ嫌いだ!)

慶次の仲間・鳴介が自分たちに対していったあの言葉。ありふれた言葉、何の捻りもない安い罵声。だが、政宗はあの言葉が胸に突き刺さって取れなかった。
仲間を想い、守るために言った「大嫌い」が、今でも頭の中でリフレインする。

「良いFriendを持ったな…前田慶次。」

それが羨ましいなんて、認めたくなかった。





「…本当に来たとはな。」
「会いたいと言い出したのはそっちだろう。」

前田家に文を出して数日。見たことも無い服着た、不思議なネズミを肩に乗せた男がやって来た。もう完全に慶次の仲間である。

「もー、先に行ったら危ないって言っただろう?スネークさん。」
「大丈夫よ慶次君。スネークに限って攻撃されるなんてヘマしないから。」
「慶次、こいつらは?」
「男の方はスネークさん。彼も仲間の一人。で、彼女はスネークさんの助手でルチアさん。」
「ほう、良い女じゃねぇか。」
「あら、奥州筆頭に褒められるだなんて光栄です。」

後から駆け足でやって来たのは、慶次と白髪の女性ルチア。追いついた彼女がスネークに駆け寄る姿を見て、ただの助手ではないだろうと政宗は見抜いたり。



穏健派に移ると決めた政宗から、そういう内容の文が届いたのは少し前。その文に、慶次のほかの仲間と会ってみたいという内容も書かれていた。
残念ながら、その日は他の面々が軒並み用事で捕まらず、唯一来れたのは捕獲屋のスネークとその助手のルチアであった。

「アンタ、南蛮の血が入ってんのか?」
「まあな。正確にはハーフだ。」
「Half…半分て意味だな。てことは混血か。」
「一応はな。」
「…一応?」
「親の顔は覚えていないんだ。」
「…そうか。」

それは半分嘘。父親の顔は知っているが…母親は知らない。
日英混血のスネークは政宗の興味の対象だった。それを、遠巻きに見る小十郎の顔には苦笑が浮かぶ。

「あぁやって見ると、彼もまだ十代なんだと思いますね。」
「まあな。子供というわけではないんだが…」
「19歳なんてまだまだ子供ですよ。」
「…お前いくつなんだ。」
「女性に歳聞きます?まぁ私は気にはしてませんけど。行き遅れとか言わないなら答えますよ?」
「価値観が違う世界の人間にそんなことを言うつもりはねぇ。」
「ふふ、流石伊達軍の軍師様。26です。」
「いい歳だな。…あいつ、スネークと婚姻は結ばないのか?」
「あら?いつ私とスネークが恋仲だと言いました?」
「見ていれば分かる。特別な仲だという雰囲気を見せてよく言うな。」
「それはごめんなさい。当たりです。…結婚ですか…もう少し先が良いですね。」
「まだ恋人関係を楽しみたいってか。」
「まだ交際一年なもので。」

目を引く真っ白な髪。それに違和感を覚えつつも、ルチアは良い女だと分かる。
髪は確かに異質だが、頭が良く会話がスムーズに進む。そして、恐ろしいほどの美貌。

「…ルチア、先に言っておく」
「はい?」
「政宗様にちょっかいをかけられたら、それなりの対応をしても良い。」
「手を焼いておられるんですねぇ。」
「…まあな。」

右腕に「手を焼く」なんて思われている時点で子供だと、ルチアはクスリと笑った。あ、右腕じゃなくて彼の場合は右目だけど。
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