特別部屋

□保健委員会が少しだけ不運でなくなった話
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忍たま世界に迷い込むポケモンのほとんどが野生のポケモンである。
野生の定義は、トレーナー・団体所有のモンスターボールに入っていないことがそれに当たるので、ボールを壊して逃げて来たヘルガーもそれに一応入る。
けれど、トレーナー・団体所属のポケモンが全く来ないかと言うと、実はそうでもないらしい。

「…アイツのトゲキッスの羽根の効果すげぇ。」
「先生、感心するところそこじゃないと思います。」

現在、忍術学園の保健室には、鳴介のトゲキッスの羽根が額縁に入れて飾られている。



保健委員会の伊作と乱太郎は、その日山まで薬草を取りに行っていた。
しかしだ。不運と名高い保健委員会の二人が薬草を摘みに行って、無事に帰れる試しがない。となると必然、巻き込まれるのは伊作と同室の留三郎である。
あとは想像に難くないだろう。
薬草こそ無事ではあったが、保健委員の二人はことさらボロボロになった。ヘルガーを連れていたためか、留三郎はそこまで酷くならなかったようだが(ヘルガーが巻き込まれ不運のストッパーになってくれたらしい)

「あーもー!保健委員のお前らがそんなボロボロでどうすんだよ!医者の不養生甚だしいわ!おら治療すんぞ!」
「すまない留三郎。」
「えっと確か傷薬は…」
「ガウ!」
「あぁ、これだ。ありがとなヘルガー。」
「あう…その傷薬沁みるんですよね…」
「乱太郎、良く効く薬程沁みるから我慢しないとね。」
「ヘルガー、乱太郎に付き添ってやってくれ。」
「ガーウ」

留三郎の隣を離れたヘルガーは乱太郎の横に座る。強面だが実のところ気性が荒くないヘルガーは他の忍たま、特に下級生になんだかんだ好かれている。おかげで乱太郎の肩から力が少し抜けた。
治療をしようとあれこれ道具を揃えていた矢先、後ろの茂みからがさりと音がした。

「誰だ!」
「乱太郎、下がっていなさい。」

先輩である二人は咄嗟に苦無を構え、殺気を出した。しかし、ヘルガーだけは違った。
この気配、この匂い、ものすごくよく知っている感じである。そう、トレーナーたちが訪れる重要施設にいるアレ…

「ハピ?」

出て来たのは、ピンクの体色にお腹に大きな卵を抱えた生き物であった。



「ハピナスとエンカウントとかどう考えても運が良すぎないか?しかもここのところ保健委員が落とし穴に落ちる回数減っているらしいし。やっぱりアイツのトゲキッスの力半端ない。」
「まあ…保護区の監視リーダーですもんね。あれでいて結構えげつないらしいですし。疫病神も裸足で逃げるんだろうな…」
「食満、お前はトゲキッスの何を見たんだ。」
「…ノーコメントで。」

言えない。合宿中に来た侵入者に対して、悪魔のような笑みで「はどうだん」「エアスラッシュ」「マジカルシャイン」をぶっ放すトゲキッスを見ただなんて言えない…。


山でハピナスとエンカウントした一行は、伊作と乱太郎の怪我を心配し、治療まで手伝ってくれた彼女(ハピナス系は♀しかいない)を連れて学園へと帰還した。これに驚いたのは言わずもがな半助である。
ハピナスは野生種が全くいないポケモンだ。ハピナスをゲットしたいなら、進化前のラッキーを捕まえて進化させる方法しかない。疑問符が頭に浮かぶ半助に、ハピナスはモンスターボールを差し出した。

「ボール?ってことは君にはトレーナーが?あ、このボール壊れてる。」
「誰がトレーナーか分かりませんか?」
「データが入っている部分は無事だから大丈夫だ。えっと…『ポケモンセンター・チョウジ所属』…君、ポケモンセンターの子なのかい!?」
「ハピ!」
「そういやチョウジタウンって、最近土砂崩れがあったって聞いたな。もしかして、その時の地鳴りか何かでボールが壊れてしまった?」
「ハピ」
「あー…だからこっちに来てしまったのか…」
「ボールが壊れてしまうと、一応野生扱いなんでしたっけ?」
「まあね。うーん…仮捕獲して帰してもいいけど、こういう法人所属のポケモンは決まったボールじゃないとダメだしな…それこそこのボールを直すか、データを移すかして帰した方が手続きが面倒じゃない。一応野生扱いだからその辺が色々面倒なんだよ。」
「じゃあボールを直す間この子どうします?」
「そこなんだよなぁ…」
「ハピ!!」

ボールが直る間、一応野生なので宙ぶらりんな状態となってしまうこのハピナス。法人所有のポケモンを悪用しないためとはいえ、あんなめんどくさい書類に目を通すのもハンコ押すのも嫌だ。じゃあボール直してから帰した方が楽なのだ。
でもその間彼女をどうするべきか。優しい種族だし、実際にポケセン所属の子だから問題を起こすことはないだろうとは思う。悩む半助に、ハピナスは元気よく手を挙げた。

「ハピハピ!ハピナース!」
「向こう?…保健室かい?」
「ハピ!」
「もしかしてお前、伊作たちと一緒に保健室に居たいって言ってる?」
「ハピハッピー!」

彼女の身振り手振りを訳すとこうだ。
さっきの子達は保健委員会って言う、怪我や病気を治す仕事をしているんでしょう?だったら帰れるまで私はそこに居たいです!
ということ。やはり根っこが超ハピナス。

「分かった。じゃあ学園長と新野先生に許可は貰っておくから、帰れるまで君は保健室勤務な?」
「ハピ!!」
「…にしても、この子超ポジティブだよな。」
「ガウ…」

ポケセンのハピナスさんはいつもニコニコが基本です。
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