日々是好日なり

□刀剣男士と卯月
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「…うわ、明石何やってんの」
「何って、昼寝に決まっとるやないですか」

 昼ご飯の後片付けを手伝って仕事に戻ると、廊下にズラッと布団が干され、執務室前の日当たりのいい場所で、明石国行が寝そべっていた。

「昼寝って…あんた今日洗濯当番でしょ?こんなとこでサボってる場合じゃないでしょうが」
「ひと休みですわ。今日は天気ええから言うて国俊が布団も干すて言い出して。他の人らはいつもの洗濯干して、自分は布団集めて干したんです」
「なるほど」

 そう言えば今朝、私も愛染に言われて布団出したっけ。「ついでだから!主さんのも!」ってシーツ持ってかれたんだった。
 にしても60振り全員の布団か…ここの縁側もいっぱいだと思ったけど、ありとあらゆるところに布団干されてるのか。
 私の布団が一番日当たりいいとこに干されてて申し訳ないなーと思う。ちゃっかりその隣に自分の布団持ってきて寝っ転がってる明石はさすがだけど。まあ重労働だったらしいし、それくらいは当番の特権だろう。

 …明石見てたら私も眠くなってきたな。仕事も急ぎのものはないし、私もちょっと休憩しよう。
 執務室に入って、お湯を沸かす。普段はコーヒー派だけど、今日はお茶の気分だったから、お茶っ葉を戸棚から出した。
 お盆に急須と湯呑みを載せて戻ると、明石が本格的に船を漕いでいた。

「ちょっと、明石。寝るな」
「ええやないですか…朝からずっと国俊にこき使われたんやし…」
「…今日の洗濯当番って」
「国俊、陸奥守はん、同田貫はん、鶴丸はん、江雪はん、鶯丸はん、膝丸はんですわ。みんな出陣も何もなかったさかい6班フルメンバーです。他の人らも見兼ねて手伝てくれましたけど。もー、平安の爺さんらすぐどっか行くし…」
「いつもながらとんでもないメンツだね6班…しかもそこにニートでしょ?愛染大変だなー」
「どういう意味です?」
「そのままの意味ですけど」

 はあ…ってため息ついてるけど、どう見ても一番大変なの愛染だ。他は割といい感じに分けれたと思うんだけど、なんでここはこんなに偏ったかな。
 愛染はかなり最初に来てくれたから、ある程度の家事にはもう慣れている。だから新人にも家事をしっかり教えるし、フリーダムな班のケツを叩いてくれている。明石がなんだかんだやってくれているのも愛染のおかげだろう。
 …後でちゃんとお礼言って褒めておこう。

 明石にお茶を入れて渡したら「おおきに」ってしれっと起きて受け取った。…こういうの性格でるよね。長谷部とか恐縮して飲めなさそう。いやむしろ逆に長谷部がお茶を用意しそう。
 2人で縁側に並んでお茶を飲む。流石に布団は避けた。お茶こぼしたら悪いし。
 …はー、落ち着く。今日は天気も良くてあったかいし、ホッとする。

「眠たくなる気持ちは分からなくもないけどね。特に今は満腹で気温もあったかいし」
「そうでっしゃろ?ほんま春は気持ちええなあ」
「明石は春初めてだっけ?」
「そうですなぁ。ここへ来たんは秋頃やったさかい」

 目の前の桜が紅葉していた頃を思い出す。なかなか来なくて、やっと来た時に一発かましたんだったか。私より蛍の頭突きのが痛そうだったけど。
 そうか、明石が来てもう半年くらいになるのか。つい最近来たと思ってたけど、月日が経つの早いなあ。

「そんなこと忘れるとか、主はんボケてきたんちゃいます?」
「よーし休憩終わり!そろそろ洗濯取り込む時間じゃない!?さっさと行ってこい!!」
「鬼ですか…」

 まだ20代とはいえアラサーに入っちゃったお年頃の女性にそんなこと言うからだよ!
 それでも明石は布団から起き上がらない。
 全くこのニー刀は。保護者の癖して、愛染と蛍の方がよっぽど働き者だ。
 ため息を吐いた後、ちょっと待ってるように明石に言って、執務室に入る。
 確か戸棚の下に…あった。
 目当てのものを持って布団畑に戻る。

「あか…こら、寝るな。起きなさい」
「んあ」

 ほんと一瞬目を離しただけで寝るんだから、油断も隙もない。…いや、むしろいつも無防備?
 二度目のため息を吐きながら、目的の袋を投げて渡した。

「何です?これ」
「チョコ。春限定の抹茶味。みんなの布団干してくれたお礼に、洗濯当番で分けて食べなよ」
「はあ…あんさんこんなん隠し持ってるから肥えてくんちゃいます?」
「あ゛?」
「おーこわ。冗談に決まっとるやないですか」

 冗談でも言っていいことと悪いことがあるでしょうが!
 …確かに昔から細くはないけど!これでも審神者になってからちょっと痩せました!!

「ま、おおきに。当番終わったらみんなで頂きますよって」
「その代わりちゃんと働くこと!」
「はいはい」

 愛染もいるからあとは大丈夫…と思いたいけどなあ。
 まあちゃんと仕事頑張ってるし、ちょっとくらい昼寝しててもいっか。



 翌日、非番の明石が昼寝しているのを見つけてまたため息を吐いた。
 仕事してなくても眠いんじゃん。





明石国行と春眠



(2018/04/01修正)
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