DB短編2

□望まぬ最強〜最終章〜
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『う…』


名無しさんの意識がゆっくりと覚醒する。


『な!!』


名無しさんは自分の状況を直ぐに察した。
柱に両腕を上に張り付けにされていた。


「おはよう、名無しさんちゃん?」


先程より明るくなった広間でアレンが名無しさんの目の前に立つ。


『…リーナ…』

「こんな時に友達の心配?」

『友達なんかじゃない…信頼し合った子だ。』

「へぇ〜妬いちゃうな…」

『……気持ち悪い奴。』


名無しさんが呟いた一言でアレンは目の色を変えた。


「気持ち悪い?誰が気持ち悪いだって?」


アレンは名無しさんの頬を手の裏で殴った。


『ぐっ!!!』


名無しさんの口の端から血が出てくる。


「気持ち悪いって、この顔のことかい?」


アレンは頬にある傷をなぞった。


「君が付けたくせに…」

『自業自得じゃんか…』


名無しさんが呆れて言えばまた頬を叩かれた。


『ぐっ…』

「この僕に傷を付けるなんて…本来ならば殺すどころじゃ足りないくらいなんだよ?」

『……』

「分かってるの?」


アレンは名無しさんを見つめる。
名無しさんははぁ〜と溜め息を吐いた。


『だって…あなたがいきなり第6宇宙に攻めてきたから追い返しただけじゃない。』

「君はその時この僕の美しい顔に傷を付けたじゃないか!」

『え…だって…あなたの趣味とナルシストの性格が嫌いだったから。』


名無しさんは苦笑いして嫌味ったらしく言った。


「うるさい!この僕の性格が嫌いだって!?」


アレンは名無しさんの腹を殴った。


『ぐぁ!』

「この僕の趣味が!美しさが!君には分からないのか!?」

『分かるわけな…がっ!!!』


腹をまた殴られる。名無しさんはゴフッと血を吐き出した。


「はぁ…はぁ…僕としたことが…つい殴ってしまった…君が美しくなかったら…今ここで殺してたよ…」

『なによ…』


キッと名無しさんはアレンを睨んだ。


「喜びなよ!君は僕の趣味に加わるんだ!」

『なっ!』


アレンがパチンと指を弾いた。
すると広間の奥にかるカーテンが開く。
名無しさんはそれを見て目を見開いた。













その頃第7宇宙では…


「ふわぁ〜」

「おや、ビルス様。お眠いのですか?」

「ん〜ちょっと力を使ったしね…寝ようかな…」

「そうですか…ん?」


ビルスと話していたウイスはふと顔を上げた。


「どうした?」

「着信…ですねぇ?地球からでしょうか??」


ウイスは杖を出してコンコンと地面を叩く。
杖の先端にある丸い玉から光が出て、その光から映像が映った。


「「なっ!!」」


その映像にビルスとウイスは驚く。
映っていたのは満身創痍のリーナだった。


「何があったんだリーナ!」


ビルスが珍しく声を荒らげた。


「ウイス様!!お願いいたします!名無しさん様を助けてください!!」


リーナは無我夢中で叫んだ。


「何があったのです?」


ウイスは冷静に聞き返した。


「名無しさん様が…捕らえられてしまったんです!」

「なっ!」

「あいつがか!?」


驚く二人にリーナは泣きそうな、苦しそうな顔で続ける。


「私が…私が人質になって…名無しさん様は私を助けようと…」

「誰にです?」


ウイスは込み上げる感情を必死に押さえ込む。


「…第5宇宙の破壊神、アレンです。」

「「何っ!?」」

「名無しさん様とどんなことがあったのかは分かりませんが…アレンは随分執着していたようです。
私は人質として用がないからと第6宇宙に放り出されました。
私では敵いません…ウイス様…どうかっ!」


そこまで言ってリーナとの通信が切れた。


「おい!リーナ!!」


リーナを心配するビルスを他所にウイスは杖で地面を叩こうとした。


「待てウイス。」

「何ですか?」


ビルスに呼び止められウイスはイライラしたように返事をした。


「どこに行くんだい?」

「もちろん、名無しさんを助けに…」

「何でだい?」

「何故って……」


ウイスはいきなり変なことを言うビルスに更に苛立った。


「助けてと言われたので…」

「本当にそれだけかい?」

「どういう意味です?」

「助けてって言われなかった君は助けなかった?」

「そんな……」


そこまで言われウイスは考えた。

何故自分はここまで焦っているのか…

それは…

答えは一つしか出てこなかった…


「いえ…例え呼ばれずとも助けに行きます。」

「そうか…ならば、ウイス…行ってやれ。」


ビルスがニヤリと笑った。
その笑みに見送られウイスは飛び去った。


「やれやれ、僕もお人好しだね…」





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