DB短編

□押してもダメなら引いてみな
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『好きです、ウイス様!』


今ので何回目の告白だろうか…


「ありがとうございます。」


告白を聞いてクスッと笑ったウイスはスタスタと去っていった。


『はぁ…まただわ。』


名無しさんはウイスのことが好きになり、直ぐに告白した。
だが、クスッと笑って「ありがとうございます」と言われただけで、特に変わったことはない…。
ウイスにとっては冗談だと思われているのか、本気にされていない気がする。
それでも名無しさんは諦めずに毎日言い続けた。


『はぁ…。今日もダメか…』


名無しさんは湖の側に膝を抱えて座っていた。
湖をぼんやり眺めながらウイスのことを思い出す。


『ウイス様…』

「何してるんだい?」


後ろから声がして振り向けば、ビルスが呆れた顔をして立っていた。


『ビルス様…』

「どうせまたウイスに相手にされなかったんだろ?」

『うっ…』


現在悩んでたことをキッパリと言われ名無しさんは苦い顔をする。
ビルスは名無しさんの横にドサッと座った。


「図星か…」

『むぅ…』

「君もよく諦めないね」

『諦めません!』


名無しさんはキッパリと言い、ビルスを見つめた。


『私はウイス様が大好きです!それは何があっても変わりません!』

「ふ〜ん…でも相手にされなかったんだろ?」

『何かいい方法ないですかね…』

「僕に聞く?」


名無しさんに縋るように見つめられ、ビルスは言葉に詰まる。
ビルスは頭をポリポリと掻いてため息を一つした。


「じゃあさ…。押してもダメなら引いてみなよ」

『押してもダメなら?』

「そ!やってみれば?」

『そっか!押してもダメなら引いてみなだわ!』


ビルスの言葉に名無しさんは目を輝かせて立ち上がった。


「聞くけど、君意味分かって…」

『ありがとうございますビルス様!早速やってみます!』


ビルスの言葉を最後まで聞かず、名無しさんはウイスの元へ走って行った。


「…大丈夫かな」


ビルスは少し心配そうに見送っていた。
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