DB短編

□私とあなたの距離
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ビルス様の機嫌が悪くなり、また罪も無い星が破壊された。
ウイスは破壊された星を観察し、記録していた。


「ずいぶん派手に破壊されましたねぇ…
生物の気配も無し…と。」


亀裂が入った地面をひょいひょいと歩くウイス。
すると、遠くに人影が見えた。


「(おかしいですねぇ…気配はほとんどしなかったのに…)」


近づいて見ると、綺麗な黒髪の少女がぽつんと後ろ向きに立っていた。
ウイスが近づいても少女は振り返ることなく、空を見上げていた。


「こんにちは。」


ここにいては危ないため、ウイスは少女に話しかける。
少女から返事は無い。
だが、少女はゆっくりと振り返った。
瞳は髪と同じく黒色。けれどその瞳は少し濁っているように見え、真っ白な肌に整った顔をしていた。


「…っ!」


格別美しい訳ではないが、少女と目が合った時、ウイスは目を見開いた。
格別美しい訳ではないが…少女に惹かれる「何か」があった。

少女はウイスと目が合うと、ふっと力が抜けたように倒れた。
間一髪ウイスがそれを抱き止め、顔を覗き込む。
よく見れば顔が少し土で汚れ、涙の痕があった。


「このまま放っておくと、星の破壊に飲み込まれてしまいますしねぇ…。」


気になってしまった手前、捨て置くことができなかったウイス。
ウイスは少女を抱き上げ、崩れゆく星を後にした。



ゆっくりと覚醒する意識…
少女が目を覚ますと見慣れない天井が見えた。


『!?』


ガバッと起き上がった少女はキョロキョロと辺りを見回す。
殺風景まではいかないが、シンプルにテーブルやイスや本棚などがあった。


『…』


ガチャッと音がして扉が開く。


「おや、目が覚めましたか?」


ウイスはにっこりと笑って少女に近づく。
だが、少女はシーツを被り、ベッドの端に移動した。
様子を窺うように開いた隙間から見える瞳は恐怖に揺れ、身体はガタガタと震えていた。


「大丈夫ですよ。
私はウイスと申します。あなたは?」


ウイスが尋ねてみるが、少女はガタガタと震えたまま何も言わなかった。


「あなたは崩れゆく星にいて、倒れたので私が連れ出したのですよ。」


少女がここにいる理由を丁寧に話すウイス。
けれど少女は怯えたままだった。


「もう少し休んでいなさい…私は出て行きますから。」


これ以上いても少女を怯えさせるだけだと判断したウイスは部屋を出て行った。
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