DB短編

□言える勇気
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そして翌日の昼過ぎ…


『はぁ〜〜〜』


名無しさんは盛大なため息をした。


『いくら緊張していたからって…
『ビルス様って何年前におやすみになられたんでしたっけ?』
って…自分で自分を殴りたいわ…。』


そして普通に「5年前ですよ」と返された。
湖に向かって膝を抱えて座る名無しさん。
自分の情けなさに嫌気が差してきた。


『なんで素直に言えないのかな…』


「…何を言うんです?」


後ろから声が聞こえた。
驚いて後ろを見ると、ずっと頭に思っていた人がそこにいた。


『ウ…ウイス様!』

「…で、何を言うんですか?」


ウイスは名無しさんの隣に立ち、名無しさんを見下ろした。


『いや…あの…なんて言うか』


まさか『告白したいのに上手く言えなくて』なんて言えない。
名無しさんは黙って俯いた。


「ちゃんと言ってくださらないと分からないでしょう?
名無しさん。言ってしまった方が楽になりますよ?」


それはそうだ。ウイスに「好き」を伝えたらどれほど楽になるか…
けど、恥ずかしくて言えない自分がいる。
でも…今が言うチャンスなのではないか…。
名無しさんはぽつりぽつりと話出した。


『実は私…ウイス様のことが好きなんです…
だから想いを伝えようとしました…。
けれど、いざ言おうとすると…恥ずかしくて…緊張して…言えなくて…
こんなんじゃダメだって分かってるけど…
振られたらと思うと更に怖くなって…』

後半の部分は涙声で話す名無しさん。
ウイスはそれを黙って聞いていた…。

名無しさんが話終えてもウイスは黙っている…
その沈黙に名無しさんは耐えきれなくて立ち上がろうとした…
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