DB短編

□押してもダメなら引いてみな
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次の日から名無しさんはビルスに言われた通りウイスを避けた。


「おや名無しさん。おはようございます。」

『おはようございますウイス様。』


名無しさんは簡単に挨拶をし、そのままスタスタと去っていった。


「…?」


いつもなら『ウイス様好きです!』と言っていたがと思っていたが、特に気にしなかった。


「名無しさん。お茶にしませんか?」

『すみません。私用事が…』


「名無しさん。今暇ですか?」

『すみません。今からお菓子作りをしますので…』


「名無しさん。今…」

『すみませーん!!』




『はぁ…』


名無しさんは自室のベッドに倒れ込む。


『ウイス様とお茶したかったなぁ…』


はぁ…とため息をして枕に顔を埋める。


『でも作戦なんだ!耐えなきゃ!』


自分で自分を抑え、名無しさんはベッドでゴロゴロする。
大好きな人と接せないのは辛いが今は我慢。そうビルスに宣言したからだ。


そうして名無しさんがウイスを避け始めてから数日後…


『はぁ…』

「どうしたんだい?」

『ビルス様ぁ…』


湖の側で膝を抱える名無しさんとその横に胡座で座るビルス。
名無しさんはあからさまに元気がない。
それもそうだ、好きな人を作戦とはいえ避けているのだから…


『寂しいです…。
ウイス様にちかづけない…』

「…そろそろいい頃なんだけどね」

『作戦…失敗ですかね』

「何してるんだろうね…」

『何がですか?』

「別に?…あと3日間頑張ってみれば?」

『3日間ですか?』

「3日間待ってダメなら諦めな。」

『はい…』


残された時間は3日間。
これでウイスから何もなければウイスは名無しさんのことを好きでもなんでもないことが分かる。


次の日。
名無しさんが廊下を歩いていると、前からウイスがやってきた。


「おはようございます名無しさん。」

『おはようございますウイス様。』


予定通りに素っ気なく挨拶し、すれ違う瞬間、ウイスは名無しさんの腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。
そして二人は近距離で向かい合う。


「名無しさん…最近どうしたのですか?」

『な…何がでしょうか?』


あまりに近い距離に名無しさんの心拍数は上がった。
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