DB短編

□逃がさない
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薄暗い部屋
堅い壁で覆われた地下室のような場所で
一人の少女が天井に繋がっている鎖に両腕を固定されギリギリ足が着くくらいまで吊り下げられている。


『ん…』


眠っていた少女が目を覚ました。
ゆっくりと覚醒する意識…。完全に覚醒すると、少女は怯えた顔で周りを見回した。


『ここは…私…』


白い薄生地のワンピースを着ている少女は、何故こんな服装で何故ここにいるのかまったく記憶にない。
気が付いたらここにいた。


『え?鎖…?』


自分が縛られていることにようやく気づき、怯え、必死に鎖から逃げようとしたが、鎖は頑丈で逃げられない…


『なんで…私っ』

「おや、気が付きましたか?」

『誰?』


コツコツと靴音をさせ、暗闇から一人の男性が来た。


『あなた…は?』

「ウイスと申します…覚えていませんか?」

『ウイ…ス?』


記憶にない名前…名無しさんは首を傾げた。


「そうですか…」


少し寂しげに微笑みながら名無しさんに近づくウイス。
名無しさんははっとした顔で叫んだ。


『助けてください!』

「何をです?」

『お願い…鎖を…』


名無しさんは泣きながら鎖をガチャガチャと鳴らす。


「何を言います…?助けるはずないでしょう?」

『え?』

「あなたをここに閉じ込めたのは私ですからねぇ…」


名無しさんは目を見開いた。
知らず知らずに閉じ込められ、しかも閉じ込めた張本人が目の前にいる…


『いや…来ないで…帰して…家に帰して…』


近づくウイスに名無しさんは怯える。
必死に逃げようにも鎖が邪魔だ…
ウイスはコツコツと近づき、名無しさんの頬に触れる。
ビクッと反応を見せる名無しさんの顎を掴み上に上げる。


「愛していますよ」

『ん…!!!!!!』


荒々しくウイスは名無しさんの唇を奪う。
角度を変え、激しさのあまり酸素を取り込もうと開いた口からウイスの舌が入り込み、口内を犯す。


『ん!んんっ!!』


飲み込みきれない唾液が名無しさんの口の端からつぅと出る。


「…はぁ」

『っ!はぁ!はぁ!げほげほ!』


やっと離れた時、一気に吸い込んだ酸素に咳き込む名無しさん。
そしてウイスは愛おしそうに両頬を大きな手で包み込んだ。
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